山尾三省を偲ぶ  2

 

      山尾三省は詩を書いた。

   「国(くに)」ではなく「郷(くに)」と書いた。

 

 

           「びろう葉帽子の下で」、その十八

 

びろう葉帽子の下で

絶望という言葉を

みだりに使ってはならない

絶望とは まさしく 死に至る病にほかならぬのだから

びろう葉帽子の下で

何万年も消えぬ スリーマイル島チェルノブイリの灰を足下に踏み

三十三基の 日本原子力発電所の灰を足下に踏み

なおも

なおも

人間を希望として

わたくしとして

より深く ただいまここに 在るほかはない

びろう葉帽子の下で

絶望という言葉を

決して使ってはならない

 

 

    「びろう葉帽子の下で」、その十九

 

びろう葉帽子の下で

郷(くに)ということばと

郷人(くにびと)ということばを つぶやく

奄美の郷

奄美の郷人

沖縄の郷

沖縄の郷人

アイヌの郷

アイヌの郷人

ホピの郷

ホピの郷人

びろう葉帽子の下で

郷(くに)ということばと

郷人(くにびと)ということばを

心をこめて つぶやく

統治のない 郷

原子力発電のない 郷

核兵器のない 郷

その郷人のなりわい

びろう葉帽子の下で

パプアの郷

カリフォルニアの郷

コーカサスの郷

日本の郷

その郷人 そのなりわいと

心をこめて つぶやく