沖縄『慰霊の日』に思う池澤夏樹

 

 「沖縄『慰霊の日』に思う」(朝日新聞)、今朝のインタビュー記事は、池澤夏樹だった。久方ぶりの池澤の声が聞こえるようだ。記事の中にこんな文章があった。

 

 「『ヤギと少年、洞窟の中へ』という絵本をきょう、出します。戦後まもなく、ある少年が飼っているヤギに引かれて、ひめゆり学徒隊が立てこもったアプチラガマ、糸数壕に入っていく物語です。‥‥たいへん大きな壕で、そこが陸軍病院となって、女学生たちが傷病兵の看護に従事した。

‥‥本の末尾に、沖縄戦で亡くなった沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒たち、13歳から20歳の211人の名を載せました。ひめゆり学徒隊の記録に載っていた名前を‥‥。

 少女たちの名前に、画家の黒田さんが一人ずつ、花を描いてくれた。お花畑の墓地です。

 ぼくは時々、夜中に、その少女たちの名前を読み上げます。ひとり、また、ひとりと、読経みたいに。‥‥

 その沖縄は、また戦争にいちばん近い島になろうとしている。

 平和がつくられたと同時に、蒸発するように消えてしまうのが、今の日本です。

 憲法9条も、護持していればいいというものではない。積極的に運用しなければならない。

 現状にあらがって、平和を作り続けている沖縄は、日本の宝です。」