彼は今、彼女は今どうしている

 

 

 「夕映えのなかに」上下巻(本の泉社)

 出版してから、たくさんの人に買ってもらい、励まされ、祝いもしてもらっている。ありがたいことです。 

 昨日は、当地の市の学校に紹介してもらおうと教育長にも贈り、いま自分の、大阪の出身校にも一セット贈るために紹介文を書いている。

 希望、歓喜、失意、葛藤、苦悩。

 これからの、この昏迷の世を生きる若い人たち、若い教師たちへの、なんらかの励ましになればと思い。

 

 かつての同僚にもと、電話を入れると、この三月に他界しましたという返事。

 若き日の友は寝たきりになっていて、老いた妻が、友の枕辺で、「夕映えのなかに」の小学校時代、中学校時代の文章を読み聞かせてくれているという。

 

 1960年、ぼくが教員になった最初の淀川中学校。そこで、年配教師のコンちゃんと、学校の宿直室で将棋をうった小柄なアットンは、すでに病気で亡くなっていた。

 初めての卒業式で涙し、教室にもどって最後の別れの言葉を語ったあの日、黒板を埋め尽くした、生徒の別れの言葉の片隅に、「この黒板を消すな」と書いたエイコは、今どこにいるのか連絡がない。

 「夕映えのなかに」を買ってくれた石井君は、手紙を寄せてくれた。けれど重い病気の身でペンを執ってくれたから、文字がよく読めなかった。

 登山部員で、いっしょに山を歩いた宏、朝のホームルームでアコーデオンを弾いて合唱を指揮した宏。彼からは音沙汰がない。

 彼はどうしている、彼女は生きているのか。