この戦争は危険だ。核戦争にいたるかもしれない。
第三次世界大戦が起きるかもしれない。
ニュースで恐れが語られている。
黒々とした圧迫感が胸に来る。危機感が湧く。
オレたちは傍観していていいのか。何もしないでいいのか。
では、何をする? 何ができる?
欧米の政治指導者たちの動きはニュースで伝えられている。
だが世界の民は何をしている。
反戦の動きは欧米にあることはあるが、世界的な反戦のうねりになっていない。
日本では国民は何をしている。
ニュースを見て、怒り、嘆いているだけか。
オレは、いてもたってもいられなくなった。ニョウボウもいてもたってもいられないと叫んでいる。
電話をかけた。
「タニヤン、何もしないのか、何かできないか。」
タニヤンが応えた。
「先日、デモを大阪でやった。東京は知らない。」
「そうか、動いているんやな。そのニュース知らなかった。」
タニヤンは、「もうオレは80歳になった」という。
「そうかあ、オレは84歳や。」
何歳になっても、戦争反対で動かなきゃあ、年齢は関係ない。
タニヤンは定年退職前、教職員組合の委員長をやっていた。
「政治家に任せておけないぞ。世界中にうねりのようなデモを起こすんや。十万人デモ、百万人デモ、一千万人デモを起こせないか。日本全国、各県で、超党派で、怒涛の反戦の動きを起こすんや。」
世界でそれが起きれば、ロシアの民も動き出すだろう。
言うは易し。行うは難し。
オレは電話で叫んでいた。
タニヤンのがらがら声が応えた。
「若いなあ、十数年ぶりに聞くその声、若いなあ。何ができるかなあ。」
そう言ってタニヤンは電話を切った。