ガルシーア・ロルカ 「さらば」

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 「さらば」という詩がある。ガルシーア・ロルカという名のスペイン人の詩。

 

      さらば

 

  ぼくが死ぬとしたら

  バルコンはあけといてくれ。

 

  子どもがオレンジを食べている。

  バルコンからそれが見える。

 

  農夫が麦を刈っている。

  バルコンからそれが聞こえる。

 

  ぼくが死ぬとしたら

  バルコンはあけといてくれ。

           (長谷川四郎訳)

 

 バルコンはバルコニーとも言う。露台のこと。家の中からバルコニーに出ると、外の空気の中に立てる。バルコニーを開けておくと、外の空気が室内に入ってくる。バルコニーは家にある室外なのだ。

 外で遊ぶ子どもの声が聞こえる。その声は、生命の響き。子どもの元気に遊ぶ声を聞くと幸せを感じる。麦刈りをする農夫の声や音がする。それもまた生命力の響き。

 ナチス強制収容所で、窓から見えるカスタニエンの樹に生きる力を伸ばし、しかし最期を迎えたユダヤ人の女性は一本の木によって慰められた。

 一匹のミツバチの羽音を聴きながら死の訪れを待つならば、心安らかなものになるだろう。

 病院の窓の外に、自然の営みが見えるならば、そこで迎える死は穏やかなものになるだろう。

 

 この詩の作者は、スペインのファシストに無残にもうち殺されてしまった。

 

 スペイン、バルセロナに、建築家ガウディが1882年に着工し、100年かけて、天に伸びる教会が建設されている。家々の窓から、あちこちの通りから、サグラダ・ファミリア教会の塔が見える。2026年完成を目指して工事は今も進む。

 ガウディは、1926年、不慮の事故で死んだ。その後、一人の日本人建築家が加わり、完成を目指してのみをふるう。