鶴見俊輔伝

 

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 12月21日の夜中に、「この本が面白い、読んだかどうか」というメールが息子から来た。これは23日のぼくの誕生日へのプレゼントだとわかったから、それよりも「鶴見俊輔伝」(黒川創)を読みたいと返事した。

 そうしたら23日、俊輔伝が送られてきた。550ページになる大作だ。

 今、読みたいと思ったところを読んでいる。

 こんな文章があった。

 「鶴見俊輔は言っていた。

 僧侶にも、神父や牧師にも、人間として好きな人はいる。だが、自分が死んだときには、そういう人たちも呼ばないでもらいたい。

 この日本という国では、戦争のとき、仏教もキリスト教も、宗教人たちはその動きに加わった。自分はそのことを忘れていない。

 自宅で、簡素なご近所葬をしてもらおう。会葬者は庭先からぐるりと自宅の周囲を回ってもらう。自分の遺骸は座敷に寝かせてあって、ガラス戸越に、最後の対面。

 たくさんいなり寿司を用意しておき、それを食べてもらって、おしまい。

  当日葬儀を手伝ってもらった人には、あとで近くのうなぎ屋で食事をしてもらう。」

 

 鶴見俊輔は93歳で亡くなった。葬儀は簡素なものだった。鶴見俊輔らしい最期だった。「鶴見俊輔伝」は、大佛次郎賞を受賞した。著者の黒川は、「思想の科学」の編集委員だった。哲学者、鷲田清一は、この著を、「鶴見の息遣いまで感じられる。自分の背中から刃を貫き、もし切っ先が余れば、相手の体にもとどくようにという、凄絶な批評精神の出どころの描写を讃えた。