山の光

 

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 午前5時過ぎからランと散歩に出た。まだ暗いが、うっすら明るくなってきている。

 山の方へ歩いた。常念山脈が西の空に黒く横たわっている。別荘だろうか住宅だろうか、前衛峰のかなり上の方に街灯の明かりらしき光が見える。

 カラスがねぐらから出てきて、二羽飛び始めた。

 その時だった。蝶ガ岳にちらっと光るものが眼に飛び込んだ。かすかな光。光はすぐに見えなくなった。眼の錯覚かな。

 蝶ガ岳から常念岳への稜線を注視して歩いていく。と、またかすかな光が稜線に見え、すぐに消えた。位置はほんのちょっと北へ移っているように思える。これはてっきり登山者だ。ヘッドランプを点けて稜線を常念に向かって歩いているんだ。

 稜線から眼を放さないで、道を歩いていった。三度目の光、四度目の光、かすかにかすかに移動している。山の沢筋には雪が積もっていて、白く見える。

 山では出発は早い。四時とか五時とかに出発する。蝶ガ岳の小屋はまだ開いているのだろうか。蝶ガ岳でキャンプして常念から燕岳へ縦走する人だろうか。

 辺りが次第に明るくなった。それよりひと足早く山頂は明ける。朝日が稜線に当たりだした。

 もう光は見えない。