万葉集のわけのわからない歌

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 万葉集には、実に多彩な歌が載っている。

 おもしろいのを紹介しよう。

「巻十六」3838番と3839番の歌。この二首に「わけのわからない歌二首」という題がついている。

 

  ◆我妹子(わぎもこ)が 額(ぬか)に生ひたる双六の

  ことひの牛の 鞍のうえの瘡(かさ)

 

 <訳>わぎもこの額(ひたい)に生えている双六の、こって牛の鞍の上のかさぶた

 

  わけわからん。

 

  ◆我が背子が たふさぎにする つぶれ石の

   吉野の山に 氷魚ぞさがれる

 

 <訳>わが背子が ふんどしにする丸い石の、吉野の山に、氷魚がぶらさがっている。

 

  わけわからん。

 

 「我妹子」は男性が女性を親しんでいう言葉。「ことひの牛」は、重荷を引く強い牛。関西では「こって牛」と言った。「背子」はここでは夫だろう。氷魚はアユの稚魚かな。

 舎人親王が「わけのわからない歌」をつくったら、ほうびをあげる、と言ったら、阿倍のじいさんと子どもが、こんな歌をつくって、ほうびをもらったと書いてある。