ドクダミ、コウモリ、草


 今年はドクダミの乾燥がうまくいった。ドクダミ茶にするには、花の時期の今がいちばんいい。
 庭に広がって咲いているドクダミの花から10センチほど茎を摘み取る。それを使わなくなった古い網戸を利用して干す。網戸は物置に置いてあるのを4枚出してきて、ランが木陰で昼寝をしている横に立て懸け、水道のホースから水をほとばしらせて洗った。乾いた網戸を工房のなかに少し浮かした状態で寝かせて並べ、
その上に摘んだドクダミを広げて載せた。風通しの良いところで日陰干し、窓を全開する。
 一昨年は、コウモリが原因で、干したドクダミが使えなかった。どこからか侵入するコウモリが、夜中に工房のなかを飛び回り、床に糞を落とす。飢えて死んだコウモリの死骸はこれまで4、5匹見つけた。それで去年から蚊取り線香でコウモリの侵入を防ぐことにしている。この匂いと立ちこめる除虫菊のガスをいやがってコウモリは退散するわけで。
 今年も、薪ストーブの横に、蚊取り線香に火をつけて置いた。毎夕、三本の蚊取りを焚く。夜中じゅうそれは細い煙を上げ、閉め切った室内に蚊取り線香の煙が香りとともに立ちこめる。コウモリは、薪ストーブの煙突が天井屋根を突き抜けている近くにひそみ、そこで子育てをしているように思われ、今年も糞がいくつか見つかった。屋根材はぼくが葺いたガルバニウム鋼板の波板で、もうすでに日中は屋根材の下は熱くて住めたものではないのだが、やはりコウモリは営巣しているらしい。不思議だ。ここ数日蚊取りを焚いたら、糞がなくなった。ドクダミの葉も、緑色をかなり残して、乾燥した。今年はこのお茶が飲める。
 畑に一週間ほど行かなかったら、またもや草のジャングルになっていた。五月の旅行のあとは、ひどかった。それをなんとか克服した後、雨が何回か降り、一週間の怠けがまた元の黙阿弥だ。備中鍬で掘りながらニンニクを採り、草を除いた。タマネギも全部収穫した。今年はネギ坊主のできる、いわゆる「とうだち」したのが多く、どうしてこんなに「とうだち」するのか、クルミのおばさんに聞いたら、
「苗を植える時期じゃないかね」
とおっしゃる。調べてみたら、植える時期と冬の間の肥料も関係しているようだ。
 午後6時を回って畑で草取りをしていると、クルミのおばさんは、
「もう上がりましょ。つかれますよ」
と声をかけに来てくれる。
「草がひどくて、わたしは怠け者だからこんなに伸びて」
と言うと、
「同じ、同じ。私とこも同じだよ。草は元気だからね」
 まったく草の勢いは猛烈だ。