ショッキングなニュース

 「産業廃棄物処分業の更新許可証を、地方事務所環境課職員1人が偽造、交付」だって? ショッキングなニュースだ。
 「長野県は22日に、本来は本庁で交付する産業廃棄物処分業の更新許可証を、地方事務所環境課職員1人が偽造、交付していた例が2件あったと発表した。この職員はほかに、産廃事業者が提出すべき書類を無断で作成したり、本庁に報告する書類を放置したりしており、不適切な事務処理は計223件に上るとしている。県によると、処分業の許可は5年ごとに更新が必要で、本庁の資源循環推進課が審査した上で、知事名で許可。この職員は2014年5月と同7月、更新申請があった業者2社に、カラーコピーを使って知事名と知事印のある許可証を偽造して交付した。」
 資源循環推進課が、業者の審査を進めていて問題が発覚したという。それを報道する信濃毎日新聞の記事は、Nさんからのメールに添付されていた。Nさんたちリンゴ農家が核となって、安曇野の果樹園地帯に造られた産業廃棄物処理業者による施設の撤去を求めて、この11年間、運動を続けてきた。安曇野の環境を守ろうと闘ってきた住民にとっては驚愕のニュースだ。県職員は、受け付けた書類の事務処理の遅れがプレッシャーになり、その場しのぎでやったと話しているという。
 地元紙の市民タイムズも報道していた。
 「偽造許可証の交付は平成26年5月と7月、職員は2回とも同課に業者からの許可申請書を上げないまま知事印をコピーするなどして許可書を偽造し交付した。」
 職員は事務処理が滞っていたことに「プレッシャーを感じていた」と話している。職員が異動した後、後任の担当職員が手続きが終わっていないのに既に更新許可証が出ているのに気づき、発覚したという。「県は偽造許可証を受けた業者が責任がないのに特定される恐れがあるなどとして、職員の性別や年齢、所属していた地方事務所を明かにしていない」とのこと。したがって処理施設の場所も該当する業者名もオープンにされていない。
 資源循環推進課と人事課コンプライアンス室の担当者は記者会見し、「事務をチェックする態勢などが不十分で組織としての責任もある」と語ったということだが、安曇野市三郷における産廃施設反対運動の住民にとっては、裁判を含め長い闘争を展開してきただけに、行政への不信感はますます深まる。
 どうしてこういうことが起こったのか。一職員が、事務処理が滞っていたことにプレッシャーを感じて、このような違法行為をした、とすれば、事務処理が滞っていたのは何に起因するのか、そして一職員のプレッシャーがどうして偽造という行為につながっていったのか、その人の状況を職場の上司や同僚はなぜキャッチできなかったのか、一職員にプレッシャーがかかって、苦し紛れに文書の偽造もやってしまう、そうなってしまう職場の体制には何が欠如しているのか。
 再発を防ぐためにチェックをもっと行なうとか、職員を処分するとかと県の関係者はいうが、もっと奥に根本的な問題が潜んでいるように思う。
 安曇野市三郷の産廃施設に反対する住民運動が起こって11年になる。運動を進める人たちはみんな仕事をもちながら、仕事の時間を削って地域の環境を守ろうとして運動してきた。70歳だった人は80歳を超えた。行政は業者の認可申請を認めて産廃施設の認可を行ない、運動は裁判闘争になった。行政対住民、業者対住民、その解決に向けて住民は生活を削り、人生を削っている。行政は何をしてきたか、ほんとうに解決しようとしてきたか。住民の眼に映るのは、役所の中から地域を傍観する行政の姿だ。現場に立って、住民と共にどうすればいいのか考えようとする姿はなかった。
 職場という組織・集団はどんな組織・集団になっているか、
 職場に民主主義が生き生きと脈打っているか、
 協議が行なわれ、職員一人ひとりが率直に意見を出しているか、
 困っていること悩んでいることも話し合われているか、
 市民の生活現場が見えているか、そこに足を運んでいるか、 
 職場と県民・市民とが意識の上でもつながっているか、
 職場に理念、倫理哲学が存在するか。
 これは、学校、警察、病院など、他の組織・集団にも共通する課題なのだ。