「安曇野の自然と水を守ろう」の旗を掲げて

 昨夜は、原告団の総会だった。
 午後7時を過ぎると外は暗い。車で家を出るとき雨が降り出し、山麓線を三郷地区に入ると、土砂降りになった。安曇野地方に竜巻注意報が出ているらしい。駐車場に車を置いて会館まで行く道は真っ暗で、道路上を水が川のように流れてくる。
 会場には300人ほどが集まっていた。「安曇野の自然と水を守ろう」の旗を掲げる人たちだ。安曇野の三郷地区に建設されたゴミ・産廃施設に反対する裁判闘争の原告団総会は、7時半かっきりに始まった。
 一般ごみ処理施設と産業廃棄物処理施設の二つの業者が住民の意志を無視して果樹栽培地帯のなかに施設を建設した。すでに一部稼動している。二つの業者は実質兄弟会社、建設されてから9年がたち、これまでに騒音、悪臭、粉塵などの被害を近隣の農家におよぼしてきた。さらに汚染水が地下浸透して地下水が汚染される危険が出てきている。しかし行政はこの業者を認可し、住民の反対運動を無視し続けてきた。
 業者は施設の周囲にコンクリートの外壁をめぐらした。壁は防音のためとかいうのだが、これがまた曲者だった。厚さ8.5センチ、高さ約5メートルの外壁は、反対運動側が調査すると、倒壊の危険があることが分かった。行政は充分な調査もせずに業者の言うがままに施設を再認可した。
 今、六つの裁判を闘っている。三件は建設を認可した安曇野市と長野県相手、二件は業者相手、1件は業者側からの反訴である。
 最近、市は外部の専門業者に壁を調べさせた。すると業者が行政に出していた資料と事実はまったく異なっていた。壁の強度は震度5以上の地震に耐えるという基準に満たず、さすがに市も危険であると認識し、業者に「十分な強度を確保するように」要望した。
 ここでまた行政の体質があらわになった。建設に欺瞞があるということが分かれば、認可は認められない、というのが筋だろう。欺瞞を認めながらなおも業者に修正を求めて、施設の稼動を容認しようとする。
 「まったく行政は信用できない」
 原告団の団長の声が響く。行政に対する不信感と怒りが、原告団総会のなかにぶすぶすくすぶる。業者にごまかしがあることが分かっていても、それを容認していこうとするのは、行政側にもごまかし、やましさがあるからではないか。
 9年の長きにわたって、農民、周辺住民に負担を強いてきたことに対しても、行政側には微塵も申し訳ないという気持ちが存在しないのか。市長をトップに、市民運動を押しつぶせると考えてきた行政、議会の多数派の横暴が、これからどう暴かれ、追及されていくか、原告団の闘いがそれを成し遂げるだろう。
 裁判闘争だけでは、市民の願望は守れない。市政を変える市民の日常の闘いがあって、裁判闘争も勝利を得る。そのことが確認された総会だった。10月の市長・市議会選挙には、市民の側から意見を出していかねばならない。
 ここにも若い人たちの参加が見られ、長期化するかもしれない運動の展望がいくらか明るくなった。

 真夜中に、渡り鳥だろうか、カモ類の鳴き交わす声を聴いた。