「仲良くしようぜパレード2014」



 侵略された、奪われたというような対立の原因があって対立の関係が始まる。そこから、
 批判―→反感―→怒り―→憎しみ―→うらみ―→排撃意識
となって、戦争が始まると、止まらなくなる。相手を滅ぼすかこちらが滅びるか、行くところまで行く。
 パレスチナのガザの死者は1100人を超えた。政治権力者が一歩も引けない心境になり、国民が沸き立っている。
 「怒り―→憎しみ―→うらみ」が戦争のエネルギーになる。

 半月ほど前、海三郎君から雑誌「季論21」が送られてきた。そのなかにコチャニュウ君の評論が掲載されていた。この雑誌は季刊で、夏号に載った特集の一つは「差別・排外主義と人権・自由」だった。海三郎君は編集長をしている。読み応えのある内容だった。コチャニュウ君は、「ヘイトスピーチを生み出す国家的ヘイトクライム」というタイトルで書いている。
 二人ともぼくが淀川中学校教師になって最初の卒業生だった。長い空白を経て13年前から開かれるようになった同窓会で会うようになって、お互いの人生を理解し、考えを知り、それぞれがこの社会に対して抱いている思いを共有することとなった。海三郎君は文芸評論家になり、コチャニュウ君はノンフィクション作家になって活躍している。これからますます心のひだにふれる話をしたいと思う。

 ヘイト‐スピーチ(hate speech)のヘイトは憎悪の意で、ヘイト‐スピーチの意は憎悪をむき出しにした発言である。
 ヘイト‐クライム(hate crime)という言葉も使われている。クライムは犯罪。人種、宗教、性に対する偏見や差別などが原因で起こる犯罪。憎悪犯罪である。
 レイシズム(racism)は、人種差別主義。

 この三つの横文字が、メディアでも使われるようになった。それが激化しているからだ。
 ぼくはコチャニュウ君に質問のメールを送った。彼は大阪に住んでいる。
 ぼくの疑問はこういうことだった。
 ヘイト・スピーチデモが激しい。大阪で、差別のない社会を実現しようと積極的に活動してきた部落解放運動や、労働組合、教職員組合など、民主運動はいったいどうしているのだろうか。ぼくの耳には全く動きが入ってこない。差別発言がまかりとおり、それがニュースになるが、差別をなくそうという市民の運動が行われているのかどうなのか、ニュースに乗らない。

 この質問してから何日かして、こんなメールがコチャニュウ君から来た。


 「アンニョンハセヨ。
 7月20日(日)に大阪で人種差別ヘイト・スピーチデモに反対する「仲良くしようぜパレード2014」が催され、1500人が結集しました。大阪市中之島公園から難波まで御堂筋に至る行進は圧巻でした。
私が撮影・編集した映像をユーチューブにアップしたのでぜひご覧ください。12分。
 ◎このアドレスをクリック https://www.youtube.com/watch?v=5Mz3_G-nOec 」


 このユーチューブを見た。穏やかなパレードだった。みんなの表情が温かい。
 「ぶっ殺せ」と叫ぶヘイトスピーチの人たちの暗い陰惨な表情と言葉に比べて、
 「仲良くしようぜ」と叫ぶパレード。韓国の民族楽器が演奏されていた。龍や獅子舞なども出ていた。