有人ヘリコプターで農薬散布‥‥

 昨日午後、有人ヘリコプターによる薬剤の空中散布の説明会があり、出かけた。
 会場は明科の公民館、安曇野市主催の説明会には50人ほど市民が集まっていた。初めに30分ほど、マツクイムシ被害の歴史と原因および対策について、長野県林業総合センター主任研究員の岡田充弘氏による講演があり、続いて安曇野市の担当者から安曇野市の被害と対策、薬剤のヘリコプター空中散布対象地域の状況、実施内容やリスクについて説明があった。
 ヘリコプターを使って薬剤をまく地域は、明科潮沢地区、岩州公園付近5ヘクタールに限定するという。市の担当者は、そこは「白砂青松」の美しいところと形容した。ぼくは、山の奥に「白砂青松」と表現するところがあるのかと少し違和感があった。「白砂青松」は、白い砂浜の海岸に青い松林が続く、日本のかつての海岸美に主に使われてきた表現だったからだ。つづく市民の発言でも、その公園は、小学校のときに遠足にも行ったし、思い出の地でもあり、白い岩石と青い松とがその地らしい景観をつくっている「白砂青松」の地だという。やはり景観がそう表現したくなるのだろう。散布の予定日は6月19日、午前6時半から7時だと、市はすでに計画を着々と推進していた。
 市民の意見は、いくつかの論点で分かれた。この公園の1000本の松を守ってほしい、というものから、農薬を空中散布しても効果の程は限定的なものだという意見、さらに生態系に及ぼす被害や人体への影響はほんとうにないのかという意見がでた。
 市の考えは、
 薬剤を撒いても、完全に松を守れるというものではない、それでもいろんな手立ての中でいちばん実効的である、薬剤による被害はこれまで出ていない、
というものであった。
 しかし、マツクイムシに比較的効果があるからそれを採用してでも、「松を守れ」「地域を守れ」と目的を一点化することが、未来に向けての生態系の保存になるのか、という巨視的な見方からの対策が考えられていない。空中散布の薬剤はどのように生物に影響を与えるか、完全に研究がなされているのか、「たぶん大丈夫」という考え方で実施してよいのか、という疑問は棚上げされた。空中散布のネオニコチノイド系薬剤はかなりの高濃度になる。そして有人ヘリの飛行費は1ヘクタール散布について75000円、5ヘクタールなら375000円、散布して3年間観察し、効果が出ていなかったら何回も撒く。
 日本のマツクイムシ被害は1900年代から始まっている。九州から北上して、結局完全に防ぐことができていない。それに執着して、毒性の強い薬を頭上から撒き散らすことで、いったい環境はどうなっていくのか、見通しは立たないにもかかわらず、迷いを含んだこの対策に歯止めがかからない。