それでも農薬を空中散布しますか



 松本市の公式ホームページに、26日、次の記事あり。
 「大切な松林を松くい虫の被害から守るために、四賀地区で無人ヘリによる薬剤散布を実施します。皆さんのご理解とご協力をお願いします。」
 反対住民や世界の動きを無視して、また実施するらしい。
 長野県では30年間、森林の松枯れを防ぐという目的で、大金を使ったネオニコチノイド系農薬の空中散布が行われてきた。安曇野市も同様。だが、松枯れは止まらない。
 近年、ミツバチが大量死している。原因は、ネオニコチノイドなど農薬汚染によるものだという。働き蜂にネオニコチノイドを投与すると、方向感覚を失い、巣に帰ることができなくなるという。
 ずいぶん前から、環境破壊や農薬の影響が懸念されてきた。
 子どもに異変が出てきたことをぼくが学校現場で感じたのは、1980年頃からだった。まずアレルギー疾患のアトピー性皮膚炎が現れた。最近学者が、アレルギー疾患がなぜ増えたのか原因が分からないが、環境と生活の激変により、子どもが土に触れなくなったからかも、と言っていた。1960年代から始まる環境の破壊は子どもの身体に影響を与え、いろいろな病症が現れてきた。発達障害学習障害も目立ってきた。
 自閉症による引きこもりの高齢化も増えている。自閉症を放置してきたからだ。自閉症スペクトラム障害注意欠陥多動性障害学習障害などの症状を持つ子どもの増加、自閉症の原因は遺伝ではなく環境にある。
 米国のカリフォルニア州自閉症児が増えたという調査があり、その原因が、PCB、ダイオキシンネオニコチノイドなど、発達障害を起こしうる化学物質にあるという。化学毒性物質は、母体から胎児に入り、胎児の脳神経系の発達に影響する。有機リン農薬を低濃度でも摂取した子どもは、発達障害の一種、ADHDになりやすいとハーバード大学が発表した。ADHDの症状は、注意の持続が困難で、多動性でじっとしていられない 、衝動性があり待てない。2012年に、米国の小児科学会が、有機リン系の農薬によるADHDなど発達障害の危険性について、公式見解を発表している。
 佐渡のトキは、ネオニコチノイドの農薬をやめたら孵化が始まった、という話だ。
 EUではミツバチを救うために、ネオニコチノイドの農薬使用禁止までこぎつけたようだ。
 二年前、国連が報告書を出した。
 昆虫や動物が花粉を運ぶことで市場にもたらす価値は、世界で年間2350億〜5770億ドル(27兆円〜66兆円)。
 花粉を媒介するのは2万種以上のハチのほかに、チョウ、カブトムシなどの昆虫、鳥やコウモリ。
 日本の農業環境技術研究所の発表では、
 昆虫が国内の農業にもたらす利益は、
 年間約4700億円。利益の7割にあたる3300億円が野性の昆虫のおかげ。
 恐るべきは、人間による破壊。国連は危機を叫ぶ。利益をもたらす功労者の生物がどんどん減っている。今後、40%以上のハチの仲間が絶滅する恐れがある。絶滅をもたらすものは、森林伐採、都市化、農薬使用、温暖化などだ。
 それを無視して、どこまでも人間は目先の利益のみに固執し、環境破壊をつづけていくのだろうか。