2円切手を求めて6キロメートル

 教え子のMさんへの返事を書いて、封筒に80円の、いわさきちひろの絵切手を貼った。Mさんは春には安曇野の我が家に遊びにくると手紙に書いていた。そのMさんの封書をもう一度見ると、80円切手の下に2円切手が追加して貼られていた。そうか、これが消費税の3パーセント分か、と初めて気づいた。もう少しで80円で投函するところだった。
 2円という金額は、50円のハガキの場合と80円の封書の場合と、同じかなあ、と頭の中で消費税3パーセントを計算すると、ハガキの場合は、1.5円、封書の場合は2.4円、どちらも四捨五入すれば2円になる。
 それじゃ、2円切手を郵便局で貼って出そうと思って出かける用意をしていたら、今日が土曜日であることに気づいた。村の郵便局は休みだ。じゃあ、コンビニに行くか。我が家にいちばん近いコンビには、北のセブンイレブンと南のセブンイレブンの2軒がある。どちらも幹線の広域農道に沿っている。どちらに行くにしても片道2キロはある。
 天気はいい。自転車で行くべ。南の店へ行きかけたが、ちょっと待てよ、北のほうが近いかもしれないとちらっと思ったから、方向転換して北の店へ走った。今日は風が強い。行きは追い風だが、帰りは向かい風になるなあと思いながら自転車をこいで行った。
 8年前安曇野に引越ししてきたときは4月だった。あの年も風が強かった。安曇野の強風に吹かれると神経が落ち着かなくなる。
 コンビニに着いて、若い店長に「2円切手ください」と言うと、切手の収納簿のようなのをぱらぱらめくって、「2円切手は切れています」と言う。2円切手を求めて来る人が多いとも言った。「ここから北へ1キロほどのところにもセブンイレブンがあるので、問い合わせてみます」
 店長は奥へ入って電話で聞いてくれたが、そこでも2円切手はなかった。
 しかたがない、初めに行くつもりだった南の店へ行っておけばよかった、と思いながら、向かい風の中、2キロほど広域農道を走った。
 南の店に入ると、女の子の店員がコーヒー淹れの器具に水を入れていた。
 「2円切手ありますか」
 「ありますよ」
 即座に確かな返事が返ってきた。よかった、ひとまず安堵して1円玉を2個、レジの台に置いたが、これからまた必要になるだろうから5枚買っておこうと思いなおして10円を出した。
 「ここで貼られますか」
 「はい、ここで追加して貼ります」
 店員は、5枚の1枚を切り離し、水で湿らせたスポンジ台を前に置いてくれた。残り4枚は小さなポリ袋に入れてくれた。
 2円切手を追加して封書に貼り、店の前のポストに投函、また自転車をこいで2キロの道を帰ってきた。結局2円のために6キロ走った。手紙、この連休の間に届くかな。

 今日は憲法記念日集団的自衛権の問題、原発の問題、武器輸出の問題、秘密保護法の問題、つぎつぎ問題が大きくなっている。国民はもっとしっかりしなければならないときだ。