今日はアフタヌーンティー

 「アフタヌーンティー 1時半ごろおこしください。手ぶらで、そのままで、気をつかわずに。おしゃべりして元気になりましょう。」
 そう書いて、我が夫婦の漫画を描いて、ポストに入れておいた。巌さんが、田舎の人は気を使って何か持っていかなけりゃと思うんですよ、と言っていた。お茶飲んでおしゃべりするだけだから、なーんも気を使うことないですよ、と言っても、気を使う。それで、こんな紙切れとなった。アフタヌーンティーをしましょうと声をかけたのは、コーラスの仲間の巌さん夫婦に、大友さん夫婦、有賀さんにご近所のよし子さん。
 お茶会は工房。コーヒー豆をこりこりとひいて、コーヒーを入れ、洋子が昨夜つくったケーキを切って皿に盛る。1時半、きっかりに5人がやってきた。計7人のおしゃべり会。

 工房を見回し、みなさんまずは手づくり工房の話題をひとしきり。ロフトに上がる階段、捨ててあったのをもらってきて修復したんですよ、巌さんの頭の上の染め物干しは、巌さんからもらった木のサッシの廃物利用です、黒く塗った梁は近所の千野さんの家の建て替えで、古家の古をもらったんです、このテーブルですか、これはリサイクルショップで1000円で買ってきてニス塗りしたもので。
 話は、気ままに飛び交う。大友さん夫妻の北アフリカ旅行、あこがれていたモロッコ、地平線に日が沈むんですよー、と話していて、ひょいと話題は転換して、我が家はランがいるからぼくは旅行に行かない、ドッグホテルに預けると犬にとってはものすごいストレスでと言うと、わたしもそう思いますよ、それは猫も同じでと、今度は飼っていた猫の話。
 「うちの猫、手術して病院に入院したら、主人は毎日、新鮮な魚をもって見舞いに行ったんですよ、一週間毎日ですよ。私が一週間入院したときは、たった一日見舞いに来ただけ。主人は2日行ったと言いますけれど」
大爆笑。
 「そんな話ができるというのは、いい夫婦ですねえ」
と大友さん。
 キジの話、キツネ、タヌキの話、そこからツバメの話。巌さん、
 「ツバメが減っているのは餌が足りないんですよ」
 「農薬のせいですか」
と大友さんの奥さん。
 「蚊がこの2年ほど増えていますよ。それまではいなかったんだがね」
 大友さんの意見に、何が変わってきたんだろうという話になった。
 ちょっと口数の少ない有賀さんが目をきょろきょろさせて、こんなことを言った。
 「この前、すぐそこの畑のなかをカモシカが歩いていましてねえ」
 こんな人里までニホンカモシカが出てきた? えーっ、みんな驚きの叫び。
 巌さんの家の前の水路に車が落ちた、いや酔っ払いが水の中を歩いていた、話が空中を飛んで、大型スーパーの賑わいから小さな個人商店がつぶれていく話、たくさんの薬屋ができて競争が激しいねと、「とをしや」に「まつもときよし」の名が出た。「とをしや」の漢字は難しいね、どういう意味だろうね、
「ウエストンが明治時代、書いた『日本アルプス探検記』に、穂高の『とをしや』に泊まったという記事があってね、旅館だった」
 「まつもときよし」は実在の人物かい、そう、社長じゃないか。
 まあ、みんな元気で、ひとりの話をきいて、すぐさま誰かが切り込んで、話題を発展させつなぐ。話は途切れず尽きず、聞きたい放題、言いたい放題、3時になって、お開きとなった。
 こっちで3人、あっちで4人とばらばらの話にならず、一人の話をみんなが聞いて、話したい人が話を投げ込む。7人という数がうまいぐあいに機能した。おしゃべりして、気分が発散し、脳が活性化したアフターヌーンティーだった。
 手ぶらできてくださいと書いておいたから効果があったと思っていたら、みなさん帰ったあとから、よし子さんが、「楽しかったあ」と言って、手づくりの奈良漬けやら何やらかやら、持ってきてくださった。これがまたおいしかった。ありがとうさん。