巌さんの柿の木は、すっかり裸になった。
落ち葉は柿の木の根元を埋めていたが、
吹き荒れた風で、どこかへ飛んで行ってしまった。
巌さんの柿の木は三本。
一昨年、成りに成った実は、秋をいろどり、
「とりにおいで」
と声かけられ、
コンテナにいっぱいもらって帰り、
干し柿にしたら、この甘露
たとえようのない美味だった。
その木が、
昨年も今年も、わずかに実をつけただけだった。
「二年続けて、干し柿用に差し上げられなかったで、
来年はたくさん稔るだよ」、
巌さんは柿の木を大規模に剪定した。
はしごを立てかけ、大枝をどっさりチェーンソーで伐って、
枝を整理した。
切り落とした大枝小枝は、柿の木のそばに積まれていた。
いずれ近々巌さんは燃やすだろうから、そうなる前に声をかけるべし。
「剪定木、ください」
「やあ、もうそのつもりだよ、留守のときに電話したんだよ」
巌さんは、小枝を切り取り、太枝ばかりを軽ダンプカーに載せてもってきてくれた。
翌日また柿の根方に払った枝が置いてある、これももらうべしと、また声かけた。
もらうなら太枝からの小枝払いは、手伝わなけりゃ。
三日目の今日、大のこぎりを目立てして、のこのこ出かけたら、
雪模様の天候で、寒さがきゅんと身にしみる。
一人で大枝から小枝を分離していたら、
巌さんが軽ダンプカーでやってきた。
「黙ってやらいよ、黙ってやらないよ」
笑っている。
巌さんは鉈をつかう。ぼくはのこぎりを使う
きっちり屋の巌さんは、ぱかぱか鉈を振るって小枝を切り取り、きれいに積み上げ、
「これはここで乾燥させて燃やします」
太枝ばかりをダンプに積んで、家まで運んでくれた。
家の庭には、柿の木の太い枝の山。
明日は、40センチの長さに、チェーンソーで切断し、
軒先に積んで、乾燥させよう。
これは来年の薪になる。