頭の中に農事暦ができていない

 ホームセンターに立ち寄った。ジャガイモの種芋があるかもしれないという気がして、駐車場へ入る。苗置き場に行ってみる。バラの苗が出ていた。トゲなしのバラの苗がいくつかあった。ちょっと心ひかれる。が、買わなかった。昨年の秋、モッコウバラの小さな苗をここで買った。モッコウバラはトゲのないつるバラで、その苗木は花に香りがあるという種類だったから買った。我が家にはすでに大きく生長したモッコウバラがあるが香りがない。香りにひかれた。買ったとき、緑色があせすぎていて、根付くかどうか、幾分気がかりだった。案の定、厳しい冬が過ぎてみると、葉はひとつもなく、爪楊枝よりも細い枝は枯れていた。やっぱりダメだったか。それでも観察は続けた。先日、鉛筆より細いくらいの幹に、なんとか少し緑色が残っているように見えた。ひょっとすると新芽が出てくるかもしれない。それで毎日見守っている。
 この苗木は枯れてるよ、こんな苗を売り場にいつまでも置いておくのはよくないなあ、と思うことが、この店では何回かあった。店員に言うよりも店長に言ったほうがいいと思って、一度話をしたことがある。
 「花木の苗の管理、養生がよくないですよ。枯れたのをそのまま、売り場に残してあったりして、あれではこの店の苗はよくないですよと宣伝しているみたいじゃないですか。印象がよくないです。花木の苗を売るのなら、きちんと苗を管理し、養生することのできる専門の人を置かないとだめです。夏の暑いときに、水も十分かけてもらっていないですよ。枯れるはずのない木が枯れていますよ。店としても損害が大きいのじゃないですか」
 そう話してみると、店長は、苗木売り場の状態を知らず、あまり感じていないようだった。気をつけますと言ったものの、その後もやはり時々苗木が枯れていた。
野菜の苗置き場に行くと、ネギの苗がたくさん仕入れて置いてあった。松本一本ネギもそのなかにあった。それを見て、今の時期にネギを植えるのかと、知った。頭の中に農事計画の暦がきちんとできていない。去年初めて松本一本ネギと下仁田ネギの苗をもらって植えたのはいつだったかなあ、と思い出せないほど、ぼくの頭もお粗末になった。晩秋から冬にかけて、白根が長く伸びたのを掘りあげて食べたら、やわらくて、香りがあっておいしい長ネギだったから、松本一本ネギの100本束を買った。ジャガイモの男爵の種芋が予想通りまだあった。Sサイズの芋だけ残っていた。それも買って帰った。これまでに買った種芋も合わせると、13キロになる。それに去年秋に収穫して食べなかった小さい芋を加えて、近々植えることにしよう。
 学校の同僚のN先生は農業もしているから聞いてみると、ジャガイモは4月半ばに植えるといいと言った。植える前に暖かい部屋で芽を出してから植えるといい。長年やってきて、この人の頭には、農事暦ができている。
 ネギ苗を植える深い溝を掘り、肥料を施し、少し土を緩衝帯用に入れてネギ100本を植えた。