餅、アイガモ肉、ワイン


 タカオ君の家で昨日、仲間が集まって餅つきをした。毎年我が家の正月の餅はタカオ君についてもらっている。午後、学校帰りにタカオ君の家によって、餅と、さばいたアイガモの肉を持って帰った。例年、餅つきのときは出かけていって、見物したり手伝ったり、何年か前は杵を振るってついたこともあったが、今回はその場へ出かけなかった。
 タカオ君のところでは、昔からのやり方で、前日から仕込み、もち米を洗って、火を燃やして蒸して、臼に入れて杵でつき、出来上がったのを丸めたり切ったりする。仲間が集まるから、その日はにぎやかな大ファミリィが出現する。だけど今年ぼくは、そこに関わることをしないで、できあがった餅の費用を払って2升分いただくことになった。もう一つ、いただくものがあった。タカオ君は米をアイガモ農法で作っている。そのアイガモを食用にするのはタカオ君の腕だ。鶏のさばきが名人で、ヒサミさんはその技の見事さを見てタカオ君にほれ、結婚した。今では、彼の田んぼで育ったアイガモだけでなく、アイガモ農法を営む中信地区の農家からのアイガモに、さらに鶏も持ち込まれて、食肉にしている。彼は昨年アイガモの解体処理施設を建設し、食肉の販売資格も得ている。
 望三郎君からメールが来たのは2、3週間ほど前だった。
 「師走に入り、気忙しくなってきました。クリスマス用の骨付きモモ肉の販売のお知らせです。信州黄金シャモの精肉済のお肉があります。地元の農業仲間津村農園の津村さんが解体精肉したものです。有機農家さんの支援の意味も込めて、黄金シャモの骨付きモモ肉、クリスマスの夕食にいかがでしょうか? とっても美味しかったですよ。黄金シャモの売上げの15%は地元北小倉の廃棄物処理施設問題の解決のための活動資金にさせて頂きます。残りはすべて津村農園にいきます。アイガモ農法を実践する仲間内のアイガモ肉を1羽セット(モモ肉、胸肉、ササミ、手羽肉)で販売しています。」
 ということで、アイガモ肉一羽分も購入する。
 タカオ君の餅は、白餅だけでなく、エゴマ入り、カレー入り、唐辛子入り、豆入り、ほかまだいろいろある。
 奥さんのヒサミさんと話していると、タカオ君が近くの仕事場からもどってきた。右手に餅、左手にアイガモの冷凍肉をぶらさげ、頑丈な首に、娘のミホちゃんがぶらさがっている。
 いつもタカオ君は冬の間だけ毎日、酒蔵の杜氏に出かけるが、この冬は週に一回出かけているということだった。二人に、NHKスペシャルで見た、ニホンコウジカビアスペルギルス・オリゼ)の不思議と価値、それを受け継いできた醤油や味噌、酒などの製造所の伝統技術のことを話した。二人は「オリゼ」の名を知っていた。和食が世界遺産になってつくられた、あのすばらしいドキュメンタリー番組を、録画があるなら見せてやりたい。
 奥さんのヒサミさんが、プレゼントと言って、地元産のワインの紅白をお土産にくれた。感謝感激雨あられ、ヒサミさんは料理の学校の先生もしている。
 餅とアイガモ肉とワインを持って、ほくほく幸せな気分で帰ってきた。正月が楽しみ。