市議会に入った望三郎君がぶつかった疑問

 安曇野市議会は、誕生して3期目を迎えた。五つの町村が合併してできた市議会だから、村議会、町議会の古い意識と体質を引きずっている。そこでこの8年間に市議会を改革していこうという取り組みもあり、議員たちの意識や感覚も徐々に変化してきた。しかし、どのような理念をもって改革していこうとするかがきわめて不十分、まちまちだったように思う。
 産廃施設反対を訴える市民運動が9年目を迎えている、
 三郷ベジタブルをめぐる市の対応、行政は訴訟費用を市民の側に払わせようとしている、
 市庁舎建設を住民投票で決めようという市民運動が署名を集めた請願は否決、
 これらに対して、議員たちはどのように向き合い、市民による市民のための政治を立ち上げようとしてきたか。民主主義を求める市民運動に対して、市長と市議会は応えなかった。大きな負債を抱えている市の財政も、「まあ、なんとかなるさ」の総無責任体制のように見える。
 このまま放置できないと考えた市民有志が、「安曇野市を考える市民ネットワーク」を立ち上げて、市議会を傍聴し、過去からの議事録を調べて、議員の発言を調べた結果を公表もした。任期期間中まったくわずかな意見しか出さなかった議員たちがいた。
 改革を求める市民のエネルギーが消えてしまった自治体は滅ぶ。対行政の市民運動は市民の政治参加である。市民参加があって、政治が生きる。将来展望をもち、理念を有する議員たちが、市民の声に耳をかたむけながら政治を画く、そういう市にしていこうと志を抱く者たちが、今回の選挙の中に現れたのだ。

 望三郎君が、議員になり、早速議会の現実にぶつかっている。彼は無所属・市民派だ。市議会には会派がある。いったい会派とはなんぞや。望三郎君の第一歩である。

 <議会には会派というものがあります。県議会や多くの市議会では会派制を取っていますが、議会は原則として議員単位として構成されています。住民は会派を選挙しているのではありません。ただ、議員数の多い議会では個々の議員が意見を出しますと、その集約に時間を要すので、同じような政策を持っている議員がグループを作って活動する方が効率的であり、また政策を実現しやすいとして会派制を設けていると言われてます。
 安曇野市市議会も会派があり、23日午前9時までに会派をつくる人たちは、会派名と議員名を提出しなければなりません。
 まず、これが僕には?です。どんな人たちが、どんな政策で会派を作ろうとしているのか、全然明らかになってないのです。議員が集まって、
 「私はこんな政策でこんな会派を作ろうと思っている。賛同する人は一緒にやりませんか?」
というような話し合いがあれば、考えやすいのに、そんな場が無い。
 会派がよく分らない人や、俺は無党派で行くよ、という人は無所属になる。ところが、無所属だと議会において致命的な不都合なことが起こるのです。
 それは議会運営委員会(議運)という議会を運営するための重要な委員会があるのですが、会派に属してないと、この議運に参加できないのです。議運では議会での質問時間が会派ごとに振り分けられ、会派に属してない無党派議員は議会での質問時間が割り当てられないのです。このように市民の代表として選出された議員が、会派を組まずにいると、声を上げることが難しい、という状況があるのです。
 それはあんまりだろう、ということで、現状では、無党派の議員同士が、便宜上無所属連合という会派を作り、議運にも参加し、自分たちの質問時間を確保しているのです。
 ・まず政策などについて説明をし合わないまま、会派ができていくことがおかしい。
 ・会派がないと議会運営委員会(議運)に参加できないというのもおかしい。>

 まったく政治未経験の新人、早速疑問が生じた。「議員平等の原則」とは、『会議を構成する議員は新旧・性別・年齢・貧富・学歴・社会的地位・所属政党等を問わず法律上において平等であるとする原則』。その観点から、会派を組まない議員も、議運に参加し、自分たちの発言時間を確保できるようにしなければならない。
 今回新人の議員たち、この疑問を共有できるか。変革できるか。