腎臓の結石が出てこない

 昨年1月に、腎臓内に結石ができていることが分かって、病院で衝撃波を当てて結石を割ってもらい、その後経過をみているが、石は腎臓の中にとどまったまま出てこない。先日、半年振りに、日赤病院でCT検査を受け、その結果を知るために病院へ行った。予約では11時となっていたから、10時半に病院の受付に受診登録をした。
 病院は混んでいた。受付の番号から推察すると、診察待ちの人がぼくより前に20人ぐらいいることになる。それを3人の医師が診る。
 ぼくは待ち時間に、何もしないのは時間の無駄づかいと思っているから、いつも本を持っていく。この日も持ってきた本を椅子に座って読み始めた。患者席には長椅子が50席ほど並んでいる。右隣に座っている御婦人は60歳過ぎぐらい、左の男性は70歳ぐらいで、奥さんらしい人が付き添っている。患者たちはただただ無言で、ひたすら待っている。座席の前の電光掲示板に、診察の近づいた人の番号が出る。自分の番号はまだまだ先だ。予約時間の11時が過ぎた。本を読む合間にちらっと番号を見るが数字は動かない。
 本を読んでいるとだんだん眠くなってきた。うとうとして目が覚め、本を読み、また眠くなってうとうとすることの繰り返し、ときどき掲示板を見る。やはり掲示板の数字は動かない。11時半になる。ぼくの担当医師は新しく赴任してこられた人のようだ。掲示板のその医師の欄が進まないということは、一人ひとりの診察に時間をかけているということだ。とうとう掲示板に、30分遅れという数字が出た。時刻は12時。30分遅れどころか、予約時間から1時間遅れている。昼ごはんの時間だ。公衆電話で家に電話をかけると家内はまだ帰っていない。ペットボトルを1本、自動販売機で買って、水分を補給した。ついに12時半、掲示板に、1時間遅れというのが出た。家内に電話がつながり、帰宅が遅れることを伝える。
 一人ひとりの患者と対面しながらじっくり診察する医師だと、時間はかかって当たり前、これだけ時間をかける医師は、熱心な医師なんだ、そう思うと、待ってもいいやと思う。ぼくも食事が遅れるが、医師も食事時間に食事が出来ない。患者の数が多いのだ。
 午後1時前、やっとぼくの番号が診察室から呼ばれた。
 室に入ると、医師は若い男性だった。
 「長らくお待たせしました」
 医師はぼくの顔を見つめてあやまる。いやいや、どうも。
 医師の前にすえられた電子画面に、CTの画像が映っている。医師は写真を動かし、ぼくの腎臓の石が画面に現れると手を止めた。白く映る石は三つある。
 「腎臓の下の方に、三つありますね。大きいのは5ミリほどです。なかなか出てきそうにありませんね。この位置だと、別の症状を起こすこともないと思いますよ。このまま様子を見ることにしましょうか。そのまま置いておいても特に問題はないと思います」
 もし、出てくることがあり、いちばん大きいのが尿管に詰まれば、激しい痛みがあるから、そのときはすぐ来て下さい、ということで、半年に一度CTをとって診ることにしましょう、ということになった。次の診察日は来春3月。
 「何日にしましょうか」
 医師は来年のカレンダーをコンピュータのモニターに出した。
「3月25日にします」
と答えて、予約決定。
 石が出てくるとき、尿管に詰まれば、38度の高熱が出て、背中が激しく痛むらしい。声も出せない七転八倒の痛みとやらが来るとか聞いた。そういうのが一人でいるときやってきたらいやだな、車を運転していたらどうなることか、と思うが、すぐに楽天的になる。医師にあいさつして診察室を出た。
 この世を去るときまで石がそのまま腎臓に残っているかもしれない。それならそれでいい。では、来年また。