「ぼくたちだ、党とは」ブレヒト

 ぼくたちの政治活動と言えば、1票を投じることだけか。それで何ができる?
 得票数が有権者数の過半数を占めていなかったが、自民党は第一党として国会を占拠する結果になった。与党は、国民から信任された政党として、政策を粛々とすすめる。「粛々」という政治家の好きな言葉。実態は粛々とは縁遠く、ぼくはこの言葉に欺瞞の響きを感じる。
 人は目的をもって集団をつくる。主義、思想を同じくするものが集まって党をつくる。考えを同じくする人は目的をもって党に寄ってくる。与党に人が集まるのは権力の行使者にくみすることが出来るからでもある。
 麻生氏の発言でクローズアップしたが、ドイツにおいて、ナチスは巧妙に党勢を拡大して多数派になり、政権を握っていった。
 そのころ、ブレヒトは「ぼくたちだ、党とは」という詩をつくった。ブレヒトナチスに対向する左翼政党の一員だった。
 結局、ナチスが国民世論を抱き込んで政権をにぎると、野党はことごとく弾圧されてしまった。


       ぼくたちだ、党とは

  だが、なにものだ、党とは?
  電話のある建物に鎮座してるのが党か?
  その考えも決断もぼくらの手の届かぬものか?
  誰なのだ、党とは?



ぼくたちだ、党とは。
きみだ、ぼくだ、ぼくたちだ――みんなだ。
きみの服を着、きみのあたまで考えてるのが党だ。
ぼくが行けば党は行き、きみが襲われれば党はたたかう。



きみが行くべき道をしめせば
ぼくもきみとともにその道を行く。しかし、
正しい道でも、きみひとりでは行くな、
ひとり離れて行く道は
いちばん正しくない道だ。
ぼくらからわかれてひとりで行くな!
ぼくらのより、きみの見る道が正しいかも知れぬ、だからこそ
ぼくらからわかれてひとりで行くな!



まわり道より近道がいい、とは誰でも言う、
だが誰かが近道を認めても、ぼくらに告げて納得させてくれぬなら、
その認識がなんのやくにたつ?
とどまって、ぼくらとともに思考せよ!
ぼくらからわかれてひとりで行くな!