虫たち


安曇野の堀金地区を山のほうに上がると、こんな風景の家もある。


 ナスの葉っぱが食われて、生気がなくなっているのがある。葉の裏を見ると、ニジュウヤホシテントウの幼虫がついている。一枚の葉に1匹とか2匹とかだが、これがなかなか手ごわい。葉っぱが穴だらけになる。だから木片でつぶしてしまう。成虫もナスやジャガイモの葉を食う。アリマキを食べてくれるナナホシテントウの成虫は翅が光り輝いているが、ニジュウヤホシの成虫はさえない色をしている。ニジュウヤホシは逃げ足が速い。人間の手の気配を感じるとポロリと地面に落ちる。この辺りに落ちたはずだがと、眼を凝らして作物の根方を探すが見つからないことが多い。さえない色が保護色になっている。土遁の術を使っているようだ。
 ナスにはコガネムシもやってきて食っている。小型のカナブンだ。2匹、3匹が固まっていることがある。この虫も逃げ足が速い。捕まえて手のひらに入れ、ちょっと手を開くと、その瞬間に飛び去る。
 バラの木で、カミキリムシを見つけた。この4年間に、マダラカミキリは庭の白樺を枯らし、カエデを枯らした。木の髄に卵を産み、幼虫は木の中を食う。
 ある日、緑の木の一部に白っぽいところが見つかる。よく見ると葉っぱが白い簾(す)のようになっている。アメリカシロヒトリだ。初期は小さな幼虫が群がっているから、その葉を枝ごと切り取って焼く。この幼虫が広がるとやっかいなことになる。先日、巌さんの柿の木の2箇所が白っぽい。よく見るとアメリカシロヒトリだ。数ミリの体長の幼虫がうじゃうじゃいる。すぐさま巌さんに連絡し、葉っぱは取り除かれた。
 最近、なつかしかったのは、田んぼでアメンボウとゲンゴロウを見つけたことだ。まだ生き残っていた。畦を歩いていくと、オタマジャクシからかえったばかりの小さな小さなカエルが何百匹、何千引き、ピョンピョン跳んで行くところがあった。これは鳥たちのいい餌になるだろう。
夕方おそく、あたりが暗くなるころ、昼間は長い列をつくっていたアリたちが姿を消していた。あの行列がなくなっている。昼間のアリの道のあったところを見ていると、たった1匹、歩いているのがいる。おい、おい、もう暗いぞ、まだ働いているのか、早く巣に帰れよ。じっと語りかけると、自分がひとり寂しい道を帰っていく気分になった。