明北小学校の水木勝俊氏の実践報告 <松枯れ病を観察して>


 「第36回 安曇野教育大集会」の松本文男講演の前に、明北小学校教諭の水木勝俊氏の実践報告があった。短い時間だったが、総合学習の時間に、子どもたちが野外に出て行なった活動だったから、大いに興味関心があった。映像を使った報告は、「ふるさとの自然を見つめて」というテーマだった。校区に残っている旧国鉄廃線跡を、水木先生のクラスの児童が、5年生から6年生へと、2年間に渡って観察したものだった。
 明科地区の国鉄廃線跡にはトンネルもある。線路にそって林がある。そこに赤松がたくさん生えていた。その松がたくさん枯れている。そこで子どもたちと一緒に先生は調べる。すると年に5000本も枯れているという。松枯れ病だ。原因を調べる。松を枯らすのはマツノザイセンチュウだと分かった。マツノザイセンチュウは、マツノマダラカミリというカミキリムシの体内に寄生している。このカミキリムシは、松の木の樹皮を食べる。そのときに体内にいたマツノザイセンチュウが、松の木に入りこむ。そしてどんどん増えて松を枯らす。7月頃、カミキリは弱った松の樹皮に卵を産む。幼虫は松の幹や枝の中で、樹皮の下の甘皮を食べて育つ。その後、木の中で越冬する。そして翌年、さなぎになり、6月頃成虫になる。
 子どもたちはカミキリムシの幼虫を飼育して観察した。
 どうしたら松を守れるだろう。調べるとアカゲラという鳥が虫を食べてくれることが分かった。アカゲラはキツツキの仲間で、カミキリの幼虫を捕食する能力が高い。
 そこでアカゲラの巣箱を作って、木に取り付けようということになった。9つの巣箱を作り、木に取り付けた。アカゲラは来てくれるだろうか。子どもたちは観察すると、4つの巣箱で使われている形跡を発見した。
安曇野地域では松枯れ病が拡大している。ふるさとの自然を守ろう。子どもたちは、自然を観察し、将来を考える広い視野に立つ学びをしている。
 このような実践が行なわれていることはうれしいことだった。総合学習の時間に、このような実践を指導した先生がいる。ぼくは高く評価したい。この体験学習は子どもたちの心に深く残るだろう。廃線跡を歩いた体験。昔ここを列車が走っていた。ここに線路を敷いた人たちがいた。その姿も頭に浮かぶ。森の木を観察し、カミキリムシを観察した。飼育もした。この虫も生きている、生きようとしている。その虫が媒介する仕組みも分かった。そしてその虫の幼虫を食べる鳥がいる。自分たちのつくった巣箱が小鳥の家になった。小鳥はうれしいだろう。
 この視野の広がり、心の広がり、そうして子どもたちはこの体験を通してもっと仲がよくなっただろう。友情が深まったことだろう。先生ともぐんと親しくなっただろう。
 安曇野市では松枯れの木を伐採して、その木を有効に使おうという試みも行なわれている。アカゲラについて調べてみると、生息密度の高い地域では材内の幼虫の90%以上が捕食された例もあるという。 キツツキ類を増やすことによって松枯れ被害を軽減できる。小鳥たちのすみか、森を守ろう。子どもたちの心に芽生えるものがある。このような体験学習、もっと各学校に広がってほしい。