「リンゴ畑でデモを行なう」、檄文が来た

 江戸時代1686年(貞享3年)、中萱村(現安曇野市三郷・堀金地区)の元庄屋多田加助は、百姓一揆を起こした。
 当時周辺の藩の年貢では、基準が1俵あたりの米の量、2斗5升だった。しかし、松本藩は3斗から3斗5升に引き上げる決定を行った。増税である。憤激した多田加助たち百姓は、2斗5升に引き下げるよう藩に訴えた。
 1万とも伝えられる百姓が松本城周辺へ押し寄せた。が、願いは受け入れられず、多田加助とその一族、および同志ら28人は磔(はりつけ)、獄門(ごくもん、さらし首)などの極刑に処された。騒動の後、2斗5升までの年貢の減免は認められなかったが、元通りの3斗に引き下げられることになる。
 今、中萱には、多田加助を記念して、貞享義民館が建てられている。

 明日2013年7月8日、リンゴ畑の広がる小倉地区で、デモが行なわれる。貞享義民館から山手に向かって、リンゴ園の展開する地帯を登ってくると、産業廃棄物処理施設が出現する。住民の意思を無視して果樹地帯につくられた施設であり、A社・M社二施設の一つは既に稼動している。デモはそこで行なわれ、施設を取り巻いて人間の鎖をつくる。
数日前、檄文がとどいた。
 デモの呼びかけ団体は「安曇野市の環境を守る市民の会」と「三郷北小倉区廃棄物施設問題対策委員会」である。

 <現地を見学しながら、業者の所業がいかに違法性のあるものなのかを説明いたします。いかにひどいかが一目瞭然です。
 市民の反対運動は既に9年目に入っています。
 業者を正しく指導すべき行政も、逆に住民と裁判で係争する始末、また議会も何人かの方を除いては強い関心をもって対応してくれていません。
 結局、本件を問題視する安曇野内外の人々がどれだけいるのか、その市民力を示すことしか僕たちにやれることはありません。
 操業許可の取り消しを求める署名活動もやっています。
 原発反対で首相官邸を取り囲んだように、安曇野の自然と暮らしを守りたいという安曇野内外の人たちが集まり、手と心をつないで廃棄物処理施設を取り囲みたいと思います。
 どうぞたくさんの人のデモ行進参加を呼びかけます。
 デモ行進の許可を警察当局に申請しています。あくまでも紳士的に合法的にデモ行進を行います。どうぞ安心してご参加ください。ママや小さな子供たちの参加も、市やマスコミへの訴求力が強まります。
 私たちは平成21年11月に240名の原告団で訴訟を起こし現在に至っております。訴訟が続いている中、昨年秋(平成24年)に安曇野市は、業者が出した許可更新の申請を認可しました。もともと問題のある認可であり、しかも現在まで騒音や粉塵などの被害が改善されているわけではありません。
 最も問題なのは、「防音壁」として作られた、施設を取り囲むコンクリートの高い壁が、構造上とても弱くて危険なことが再三にわたり指摘されているのに、事実と異なる虚偽の申請をきちんと検証することなく、「安全なものだ」として市は「許可」してしまいました。
 行政のずさんな対応には呆れるばかりです。
 このことに対しても、これまでの裁判の流れの中で、その違法性を訴えています。
 同時に、産廃処理業の許可を出した県に対しても、その許可処分には違法性があり、許可更新の申請を「許可」した県を訴えています。
 騒音や粉塵の被害、水や大気や土壌の汚染など、健康被害を防ぐために、業者の操業を止める訴えも起こしています。>

 大滝山から蝶ガ岳に連なる山岳地帯の麓である。そこで野良仕事の人を中心にデモを行なう。田舎の果樹栽培地帯を舞台にして、住民の民主主義をつらぬこうとする9年に及ぶ稔らぬ闘いが、ここに来てデモと人間の鎖となる。