野菜の収穫


ニンジンが畑に残っていた。そのままにしておいたら、こんな花が咲いた。


 ニンニクとタマネギを収穫した。肥料不足のせいで球が小さい。先だって隣の畑を耕している高山さんに聞いてみると、高山さんのタマネギも小さかったと言った。昨年から使わせてもらっているこの畑は、去年ぼくが黒豆を植え、その前は子ども会でサツマイモを作っていた。だから土に肥料分のたくわえがない。去年入れた元肥えも足りなかった。
一反歩の空き畑を三等分して使わせてもらっている。高山さんはその一つで野菜をつくり、ぼくが南端の三分の一を耕している。
 「タマネギ、小さくてもいいですよ。小さくても、まるごとスープに入れて食べます」
 「そうですね。ピンポン球よりも小さなのも多いけれど食べましょう」
 高山さんは陶芸をやっているそうだ。
 畑から道をはさんだ広い敷地に住んでいる農家のHさんから、伐採したクルミの樹の枝を薪ストーブの燃料にいただいている。ときどき時間ができると、のこぎりと、チェーンソーを持っていって、薪をつくっている。4月から切り始めた。残っているのは、直径が30センチ以上の太い枝と幹で、巨木の幹はぼくのチェーンソーでは手に負えない。林業用のでないと切れそうにない。Hさん御夫婦は気がよくて、ぼくのいない間に小枝の部分を取り払ってくれている。作物のこともいろいろ教えてもらう。先日おばさんから、
 「タマネギは大きいのから先に食べていきましょ。小さいのは長持ちするから、後に残しましょ」
と教えてもらった。そうなのか、大きいほうが早くいたんでしまうのか。
 去年作ったタマネギのうち、春まで残したものはニョキニョキ芽が出て、実は変質し、結局捨ててしまった。カボチャもいくつか残ったのは腐ってしまい、捨てた。ジャガイモも芽が出た。冬を無事に越して保存するのは難しい。
 今ジャガイモが葉を茂らせている。サツマイモはまだ生育が盛んではない。黒豆は芽が出そろってきた。作物のあちこちに伸びているアカザを引っこ抜く。アカザは作物の背を越してすくっと伸びる。草欠きをしなかったら、一面のアカザになりそうなぐらい、この草は多い。アカザが杖になることを最近知った。どんな杖になるのか、アカザを何本か育てて、作ってみよう。
 庭のトウモロコシが穂を出し始めている。キュウリはまだ幼いが、一番花を咲かせている。春に買って植えたブルーベリーの苗は実を少しつけた。望三郎君からもらった挿し木の枝30本のうち7本が根付いた。
キャベツは結球して食べごろだ。アオムシを毎日捕ってきたが、ここ数日、アオムシを見かけなくなった。ヨトウ虫は3匹つかまえた。奈良の金剛山麓にいたときは、白菜やキャベツの虫取りは毎日1、2時間やっていた。そこではヨトウ虫が圧倒的に多く、破壊的な食欲だった。
 広げた巨大な外葉のなかに球を結んでいるキャベツ。その葉のなかに頭を近づけると、なんともいえない心地よいキャベツの香りがして、思わず深呼吸をしてしまう。球と外葉との間のすきまに、クモが住んでいたり、アマガエルがひそんでいたり、ナナホシテントウがアリマキを探していたりする。虫のいるところには虫が寄る。そこへ小型のアシナガバチが飛んできて、虫食いの葉の穴に頭を突っ込み、何かを探しまわる。たぶんアオムシだろう。くわえて飛んでいくのを見たいと思うのだが、アオムシがいなくなったから、チャンスが来ない。
 お隣のO夫人が蜂に二回も刺された。一回は洗濯して干しておいたパジャマに蜂がついていた。二回目は、蜂が腕の横をすり抜けるように飛んで行きざま刺した。腕がぱんぱんに腫れている。
 キャベツをノブにプレゼントしようと、先日公民館の日本語教室に持って行ったところが、ノブは休んだ。ノブのアパートの場所を聞き、夜道を車で飛ばして持って行ってやったのだが、アパートの部屋が特定できず、渡せなかった。金曜日はノブの仕事が休みだから、電話を入れたら通じて、朝8時半に野菜を取りにきた。プレゼントしたのはキャベツ、レタス、シシトウ、ズッキーニ。
 「自分で料理している?」
 「はい、野菜を炒めたりして食べています」
 「ズッキーニ、知ってる?」
 「知りません」
 「これも、こうやって輪切りにして、炒めてもいいよ」
 野菜と肉を炒めて食べているという。料理法をもっと勉強して、コンビニ弁当ばかりじゃなく、自分で作って食べるようにしなければ。
 「それから漢字もテキストを用意して勉強したほうがいいよ。漢字をもっと覚えなけりゃ。将来マッサージ師になりたいのなら、どうすればなれるか、今診てもらっている病院の先生にも相談してごらん。いつまでもコンビニのアルバイトするわけにはいかないだろ。たっぷり野菜を食べて、丈夫になって」
 右の顔面と耳、そして口が麻痺したのは原因が分からないが、ストレスではないかと、今診てもらっている病院の先生の見解だという。
 今日は、同じパラグアイから来ている親戚の人と会う約束になっているからと言って、野菜を持ってノブは帰っていった。