「トマトの苗、いりませんか」

        ズッキーニ


 種から育てた大玉トマトとミニトマトの苗が余り、誰かにもらってもらおうと、日曜の朝、子ども会の親たちの家へ、苗を持っていった。まず数軒の区画に建てられた新興住宅地2箇所をたずねる。小学生のお母さんたちに、
 「トマトの苗、要りませんか。子どもと一緒に育てたトマトを、夏の朝、がぶりと食べるのは、おいしいですよ」
とお勧めすると、初めは、植える庭がないとおっしゃる。が、プランターを置くスペースはあるじゃないですかと言うと、
「じゃあ、大玉トマト1本、ミニトマト2本ください」、
と、2軒のおうちで植える気になられた。そこで喜んで苗をお渡しした。
 もう一箇所の新興住宅地に保育園児の親を訪ねると、若いお父ちゃんと、おじいちゃんが庭にいて、収穫したタマネギを20個ほど干しておられる。庭には畑がない。どこか畑を借りて家庭菜園をなさっているのかな、と思いながら、トマトを勧めると、
「もう植えてあります。実ができていますよ」
とおじいちゃん。
「え、そうですか。早いですね。今から苗を植えてもできますよ」
と勧めたけれど、不要だった。
 午後、山手の集落に住むヨウ子さんの家へ、レタスの2株と、トマト苗5本を持っていった。ヨウ子さんも、植えるスペースがないというけれど、砂利交じりの土を掘り返して、垣根の腐葉土など集め、5本の苗を植えるうねをつくった。日陰を作る生垣を剪定し、苗を植えると、ヨウ子さんは、
「夏が楽しみ」
と言ってくれた。たまに生長を見に来ないといけない。実ができますように。
 リーフレタスがたくさん葉を茂らせている。体をこわしたノブのこともある。夜の日本語教室にやってくる若い人たちみんなに食べてもらおうと、リーフレタスの葉をもいで、7人分それぞれ用に、ポリ袋につめた。緑の色もあざやかな、しゃっきりした葉だ。
 夜、公民館に行くと、やってきたのは8人の若者、一人分足りない。じゃあ、王さんの分はあした寮へ届けることにしようと言うと、チンさんが、
「私は主人の実家からもらってきたのがあるから、いいです」
と辞退した。チンさんの旦那は日本人で実家が安曇野にある。それならとチンさんをのぞいて、みなさんにもって帰ってもらった。病院に行って治療してもらってきたノブには、もう一種類、コマツナをプラスした。
 「野菜をたくさん食べたほうがいいよ。無農薬だからね、安心だよ。コマツナは、油揚げを買ってきてコマツナと煮るといいよ。」
と、ぼくの料理法を伝えた。やはりノブは野菜が決定的に不足している。自分で料理を作ることは、たまにしかないと言うのだ。これじゃ、免疫力も低下する。

 ご近所のOさんがくれた「いとうり(糸瓜)」2本がつるをのばしてきた。ズッキーニも実をつけている。糸瓜って、どういう育て方をしたらいいのかよく分からない。インターネットで調べたら、糸瓜(へちま)とは漢字は同じでも無関係で、ズッキーニの仲間だった。「そうめんカボチャ」と言ったり、「そうめん瓜」とか「金糸瓜・錦糸瓜」とか言ったりもする。食べ方も調べた。
 <瓜を5cmぐらいに輪切りにして鍋で茹でる。冷水に冷やすと、細い繊維状にほぐれ、本物の麺のようになる。シャリシャリした歯ごたえで、サラダや酢の物などで頂く。「加熱してもシャリシャリ感が無くならない。 夏場に涼を呼ぶ食材として、人気上昇中な野菜>とか。