日本語教室で「ビリーブ」を歌う

 日曜日のことを書いておこう。日曜日の夜は公民館で、午後7時から9時まで外国人のための日本語教室である。
 ここ数週間、みんなで日本の歌をおぼえて歌おうと、最初の30分間練習してきた。今練習しているのは「ビリーブ(Believe)」。1990年代、この歌はNHKの番組のテーマ曲となって感動を呼び、小中学校の合唱曲として全国的に歌われるようになった。作詞作曲は杉本竜一。
日本の歌を覚えることで、日本語も上達するだろうと思ったことと、悲しいとき、つらいとき、歌が自分を励ましてくれることもあるだろうと考えたことから、今はこの歌を歌っている。
 「みんなで覚えて、歌おうね」と、第一回目は歌詞の内容をつかむことにした。「傷つくって、どういうことだろうね」、「くじけそうになるって、どういうことかな」と、ジェスチャーを交えてとらえていった。

1.たとえば君が 傷ついて
  くじけそうに なった時は
  かならずぼくが そばにいて
  ささえてあげるよ その肩を
   世界中の 希望のせて
   この地球は まわってる
   いま未来の 扉を開けるとき
   悲しみや 苦しみが
   いつの日か 喜びに変わるだろう
   アイ ビリーブ イン フューチャー
   信じてる
2.もしも誰かが 君のそばで
  泣き出しそうに なった時は
  だまって腕を とりながら
  いっしょに歩いて くれるよね
   世界中の やさしさで
   この地球を つつみたい
   いま素直な 気持ちになれるなら
   憧れや 愛しさが
   大空に はじけて耀(ひか)るだろう
   アイ ビリーブ イン フューチャー
   信じてる
   いま未来の 扉を開けるとき
   アイ ビリーブ イン フューチャー
   信じてる 

 これまでの2週間はぼくが歌い、みんなにも復唱してもらってきた。
そして3週目のこの日、O先生が、キーボードをもってきて、伴奏をつけてくれるという。
 ピアノに似たメロディが入って、いよいよ本格的だ。練習をはじめると、パラグアイのノブが、家でも練習したよと言いながら、ひとりで歌いだした。それがまあ、たいへんな調子はずれ、それでも照れずに歌う率直さがいさぎよく、かわいい。みんなもまだまだ覚えきれない。
 数回繰り返して練習してから、一人ひとりに歌ってもらうことにした。初めは中国人のトウさん、次にオウさん、ベトナム人のトウ君、ハップ君、中国人のリ君、そしてノブ、ベトナムのルアン君。
 歌の三分の一ほどは、音程が外れたりしたが、それでもかなり歌えるようになってきている。一人歌いきるたびに、みんなで拍手した。一人で歌うとなると、少ない人の中であってもやはり緊張する。だからほとんどの人が出だしが狂った。最初は変だったが、途中からメロディを歌うことができるようになっている。これには感心した。うれしいことだ。
 もう一度全員で歌おうというと、ノブが立って歌おうと提案した。そのほうがお腹から歌えると言う。教師陣はノブを見てうれしそうに笑う。そこで、「ではみんな立って歌おう」。
 30分の練習は充実していて、楽しかった。この夏、中国人の三人が帰国する。その送別会をすることになり、日は6月30日に決まった。