キジ、チュウヒ、ムクドリ、スワロウ・ボウル

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 一羽のキジが冬枯れの野を、首をすっと上に伸ばしてトコトコ歩いている。直立する首は、野の海原に伸ばした潜望鏡だ。キジはぼくらを見ている。見ていないようで見ている。ぼくとランもキジを見つめている。ランは見慣れたカラスにはまったく関心がない。キジになるとがぜん猟の本能が騒ぐらしい。はるか遠くにいるキジの、カラスとは少し違う体型を見分けている。見つけたとたん目つきは鋭くなる。
 キジの駆けるのは速い。早足になると小学生が走るほどに速い。沖縄のヤンバルクイナなみの脚力だ。野に餌を求め、野で営巣するキジは、歩く力が発達した。キジの歩いていく方向にぼくらも歩いていくと、キジは忍びの術を使う。石積みがあった。その陰にキジは身を隠して、ぼくらをやりすごそうとする。そこに隠れていることは分かっているぞと思いながら、石積みの横を通りながら石積みの向こう側を観察する。キジは見つけられないように移動して身を隠しているつもりだが、その頭の先が動いていくのが見える。うまいぐあいに回り込んでいるな。それでも身を隠しきれなくなる。すると、翼音を立てて数メートル上空に飛び上がり、ほぼ水平に滑翔して、数枚向こうの畑のなかに消える。
 ある日、4、5羽が連れ立って道路を横断するのにいきなり出くわした。メスのキジだった。キジも驚いたものだ。あわてて民家の生垣のなかに突っ込んで行って忍びの術を使った。ランの狩猟本能はこのときもかきたてられ、リードをぐいぐい引っぱる。リードにつないでいなかったら、どこまでも追跡しただろう。
 この冬、タカの仲間のチュウヒを見た。空を旋回する様子が、トビとは違っていた。翼の先が黒く、胴体が白かったから、あれは何だ、と調べてみて分かった。この冬に見たタカの仲間は、このチュウヒとチョウゲンボウだ。
 このごろムクドリの群れを見る。翼の先が尖っていて飛ぶと広がった翼が三角形に見える。黒褐色の身体に、腰の辺りが白い。誇り高いモズは単独で庭に来る。
 日本野鳥の会が、ツバメの調査をしている。昨年ツバメの数が減少しているということで、我が家もツバメの様子を日本野鳥の会にメールで送ったりしたが、その関係から今年、新たな試みをすることへの協力依頼が来た。それは例年巣作りしているところとは別のところに、素焼きの陶製の巣を取り付け、営巣するかどうか調べるというものだった。送られてきた巣は、イギリスで作られヨーロッパで使われているものだそうだ。日本でこれをツバメが使ってくれるかどうか、興味ある実験になる。巣の名前は「スワロウ・ボウル」、きれいな球形を四分の一に断ち切った形をしている。日本の現代建築では壁が合成樹脂だったり、モルタルに塗料を塗ったものだったりして、ツバメも巣作りが難しくなっているのではないかという予測があってのモニター調査だ。
 この「スワロウ・ボウル」、工房の軒に取り付けようかと思う。工房は外壁も杉材だから、ビスで簡単に取り付けられる。さて、ツバメたち、来てくれるかな。