村のコーラス、「花は咲く」

 村のコーラスの会で歌っているのは「花は咲く」、
 NHKの番組の合間によく聴いた歌、俳優や歌手やスポーツ選手や、次々短くリレーで歌いつなげていた「花は咲く」、
 ぼくらは三部合唱で練習している、村の公民館で、熟年、お年寄りが集まり。巌さんの息子さんのお嫁さん、奈良の佐保川の佐保を名前にしたという佐保子さんがピアノを弾いて伴奏してくれる。
 この歌、あの東日本の大震災のあと歌われ、今では学校でも子どもたちが歌っている。
 指揮をする78歳の平林さんは、社会福祉協議会事務局で働いている現役。震災があった年の夏に被災地にボランティアにも行ってこられた。この歌を歌うと被災地を思い出すとしんみりされる。
 男性はバスのパートを歌う。歌っていると歌詞が心に浸透してくる。
   「花は 花は 花は咲く  わたしは何を残しただろう」
 自分の人生、自分の想いが、胸にわきあがってくる。それぞれが、自分の人生と被災地の人びとを思って歌う。
   「傷ついて 傷つけて  むくわれず 泣いたりして
    いまはただ いとおしい  あの人を 思い出す」
 歌は次第に三部合唱になっていく。


     まっ白な雪道に 春風香る
     わたしは なつかしい
     あの街を 思い出す

       かなえたい 夢もあった
       変わりたい 自分もいた
       いまはただ なつかしい
       あの人を 思い出す
      
  
  きこえるか、愛する人よ、わたしはもろ手をあげる 
  きこえるか、このざわめくけはいが
  孤独なもののみぶりには、かならずやあまたのものが
  聞き耳を立てていはしないか
  きこえるか、愛する人よ、わたしはまぶたをふさぐ
  それさえが、おまえにとどくひびきなのだ。
                (リルケ