「樹木葬自然公園と子どもの森」構想実現に向けて<自然葬の実践例>

 「自然葬ハンドブック」を取り寄せ、読んだ。そのなかに、遺灰を海や大地に撒いた人の名が載っていた。タゴール、ガンディー、ネール、周恩来、�殀小平、アインシュタインエンゲルスケインズジャン・ギャバンライシャワーなど、宇宙自然界に帰っていった人は数え切れないという。遺灰を自然に還す散灰という自然葬は世界各地で行なわれている。(葬送の自由をすすめる会 出版・凱風社)
 ガンディーの遺灰は、ヤムナー川ガンジス川南アフリカの海に撒かれた。周恩来の遺骨は飛行機で中国の大地に撒かれた。
 ハンドブックには、海や山に家族を散骨した人の感想も掲載されていた。

 夫を海に自然葬にした妻の手記。
 「濃い群青の波のなかに、胡蝶が舞うがごとく消えていきました。そして、あなたが大切に育てた黄エビネミヤコワスレ、ピンクのカンパニュラや青いヤグルマソウ、色とりどりの花々が波間に舞いました。この美しい光景はあなたが願った、『宇宙から生まれ、宇宙に還っていく』尊厳な儀式でした。」
 「深緑の海に真っ白な粉がフワーっと広がりながら沈んでいく様は、なんとも言えず感動的でした。故人の穏やかな人柄と静かな海とが重なり、波間から主人が『ありがとう』と手を振っているかのようでした。」
 父を森に散骨した人の手記。
 「『再生の森』に足を踏み入れ、豊かな風景のなかで、父の骨粉を撒いていると、不思議な気持ちになってきました。この感覚があってこそ故人と向き合える、これこそ自然葬という行為の本質ではないかと感じました。」
 信州の山が好きだった夫を送った妻の手記。
 「白いリンゴの花びらがひらひらと舞い落ちるなか、それぞれ思い思いのリンゴの木の根元に散灰しました。簡素でしたが暖かい心の通い合う自然葬にして本当によかったと思っています。その日を生涯忘れることはありません。」

 外国での散骨を希望する人もいる。フランスでは公道以外はどこに撒いてもよい。イギリスでは、スキャタリング・グラウンドという墓域として認められた区域があり、そこに撒いてよい、川は水質管理上の問題がなければ撒いてもよい。韓国では、火葬された遺骨は山野に撒かれるのが普通。中国では、上海、広州、杭州、天津などでは、散骨が奨励されている。インドでは、河川への散灰が広く行なわれている。ゴビ砂漠に散骨した日本人もいたという。
 「葬送の自由をすすめる会」は、入会した人たちの、海や山、森への散骨を手助けしている。海に散骨を希望する人たちの願いに応えて、イギリスのチャーチルが愛用したヨットを使っている写真もハンドブックに載っている。全長30メートル、総トン数73トン、定員30人のアンティークなヨットで、相模灘での自然葬である。
 「故人の関係者の追悼の言葉などが述べられた後、散骨に入った。小さな花輪に遺灰の入った袋を結びつけ、霧笛の鳴り響く中、海に流した。つづいて参加者が生花を流すと、花の列が波間に消えていった。日本酒とワインの栓が抜かれて海に注がれ、全員が黙祷した。」(ハンドブック)