「おすそわけの会」をつくる計画


 我が家の庭に、たくさんホウキソウが茂っている。去年のこぼれ種から芽を出した。それをご近所に家を建てて転居してきたばかりの若夫婦の家に50本ばかり持っていったら、道路際に長い列にして植えてくれた。ぼくも一緒に手伝って植えた。
「秋になると、それはそれは紅葉が美しいですよ」
と絶賛したら、奥さんが楽しみにしてくださった。去年の冬、ぼくは枯れたホウキソウで室内用のホウキを作り、それを工房で使っているが、そのことを伝えるのは忘れていた。

 いよいよ相互扶助のコミュニティにむけての活動、一歩を踏み出すことにした。一人のアイデア、希望がどういうことになるか。

 「おすそ分けの会。物のおすそわけ、心のおすそわけ、ちょっとした、気軽な助け合いが人と人とをつなぎます」と見出しにして、提案書の原案が出来上がった。次の土曜日、地区の評議員会で提案する。内容のところは次のように書いた。

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        おすそ分けの会
 相互扶助社会をつくろう(物のおすそわけ、心のおすそわけ)
 
☆1 あげます ―― ください(無料の贈りあい)
   (例)「野菜の苗が余りました。ほしい人にあげます。」
    花・野菜の苗、樹木、収穫作物、家具・道具・建具、わら・草木灰、衣類、何でも。
    あまりもの、いらなくなったもの、いろいろ。必要な人にとってはほしいもの。

☆2 ゆずります ―― ゆずってください (有償の譲りあい)
   (例)「まだ新しいストーブです、金額はいくらでもいいです」
    当事者同士で相談して、適当なお金で譲り合い。農作物、家具、道具、農機具、など。

 ☆3 貸してあげます ―― 貸してください (有償、無償) 
   (例)「家庭菜園の小さな畑を貸してください」
    畑、家、部屋、道具などいろいろ。

 ☆4 援助してください ―― 援助してあげます (有償、無償)
   (例)「腰を痛めました。買物に行けません。助けてください」
    自分一人でできない、家を留守にするので困っている、力を貸して、手伝って。
    暮らしのこと、子どものこと、話を聞いてほしいこと、などいろいろ。
 
 事務局を公民館に置き、活動運営のお世話はボランティアで行なう。事務局に掲示板をつくり、記録ノートを置いて、そこに贈りたい人・贈ってほしい人の希望を書くようにする。その記録簿は自由に閲覧できるようにする。区の回覧板を活用して、随時お知らせすることも行なう。
 一緒にやりませんか。世話人ボランティアを募ります。

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 これが提案書の中身だ。「おすそ分けの会」という名前は考えに考えてつけたものだが、もっといい名前がありそうで、評議員会で協議したら、何かアイデアが出てくるかもれない。
 以前、他県に住んでいたとき、その市では、ボランティアによるこのような贈与活動が行なわれていて、市が事務所をボランティア団体に提供していた。ぼくがその事務局を訪れたら、「イタリア製デロンギのストーブ、金額はいくらでもよい」と記録簿にあった。事務所の人は、「直接家に行って話し合ってください」、というから、名簿に書かれた家に行くと、「子どもが小さかったときに使ったけれど、もう使わないので、お金はいくらでもいいです」とおばさんが言ってくれた。数万円もするストーブだったが、金額は三千円。ありがたくちょうだいして持って帰った。
 その話を区長にもした。区長は、大いに賛成してくれている。
「早速その提案書を印刷しましょう」
 区長が一昨日来てくれて、印刷の段取りをしてくれた。
 次の土曜日の話し合いはどういうものになるだろうか。