ゴーヤのグリーンカーテンをかたづけた。毎年、家の南面と西面、窓の外に日よけ用のグリーンカーテンをつくっている。軒の雨どいと地面の間にネットをはり、そこにゴーヤをはわせた。ネットは、つる性の野菜をはわせるのに使うもので、サイズがいろいろあり、網目の大きさもいろいろある。ゴーヤは暑い地方の植物だから夏の日差しを受けて繁茂し、屋根まではいのぼる。黄色の小さな花が咲き出すと、蜜蜂や花アブが朝早くからぶんぶん密を吸いに来る。葉が密生する真夏は、室内がいくらか薄暗くなるほどだ。実は表面にぶつぶつの丸い突起状のものができて、つややかな緑色を呈する。たくさんの実ができると食べきれない。そのまま置いておくと熟れてオレンジ色になり、やがてお尻のほうから割れてくる。割れて中身が露出すると、同じオレンジ色の種が現れる。種はぬるぬるしたものに覆われていて、それを口に含むと甘い。沖縄ではかつてそれは子どもたちのおやつになった。
ゴーヤの実がたくさん採れた時、日本語教室に来るベトナム人の青年たちに持って行った。勉強が始まる前、机に置いたゴーヤの包みからどでかいのがはみ出ているのを見える。それを見たトー君とハップ君、にやりとうれしそうな顔をした。勉強が終わると、いそいそと持って帰った。
「みんなで分けて食べるんだよ」
我が家では、沖縄料理のチャンプルにしたが、ベトナムではどんな食べ方をするのか、まだ聞いていない。
今年は九月になっても暑さがつづき、ゴーヤはよくできた。軒に近いところの実は高すぎて取れない。そこは長い柄にはさみが付いた「高枝切り」をもってきて、柄を伸ばしてちょきんと切る。
十月に入って気温が下がってきた。山に雪が来て、天気予報に二回ほど霜注意報が出た。そうするとゴーヤはたちまち勢いが消滅し、最近になって葉はちりちりと枯れた。ヤマボウシもアメリカハナミズキの葉も紅葉し始めた。ホウキソウは真っ赤に色づいている。コスモスの花は終わった。
葉は枯れても、ゴーヤの実は緑色のやオレンジ色のがまだあちこちにぶら下がっている。気温が高ければ生長する予定をしていた実だったが、気温が10度近くまで下がって生長をストップさせ、結局小さなままで生を終えることになってしまった。
脚立を伸ばして梯子にして、屋根まで伸びた蔓をひきちぎる。半分枯れた蔓はばりばりとネットからはがれる。去年は蔓がなかなか切れなかったが、今年は簡単に蔓が切れた。雨どいの中にゴーヤの実が隠れていた。大きな実、親指ほどの小さな実、実を全部採って集めてみるとかなりの量になった。バケツに一杯はある。緑色の実は、大小さまざまだが食べられるなら、またベトナムの青年たちに持っていこう。彼らはキノコ栽培をしている農場で実習生として働いている。キノコの農場だから、キノコをよく食べるのかと訊いたら、全然食べていないと言った、商売のキノコを実習生に食べさせるわけにはいかんということなんだろう。
次男の嫁のお父さんから、大和の柿が送られてきた。大きな発泡スチロールの箱にぎっしり入っている。渋柿の平種なしの渋を抜いたもの、熟柿になりかけているのもある。熟柿は実の真ん中にスプーンを差し込んで十文字に切り、柔らかな中身をスプーンですくい取って口に入れる。大和の柿だ。
この辺りの柿が今年はさっぱり稔っていない。原因は柿の花が咲くころに雪が降ったため、授粉した花が落ちてしまったからだ。
ミヨコさんのところにおすそわけ、
「柿大好きー」
イワオさんのところにおすそわけ、
「我が家の柿、今年は全滅」
とうれしそう。