草と虫

雨が三日間、降り続けている。
この夏、庭の草はぼうぼうと茂り、何度か引っこ抜いたけれど、またすぐに地表を覆いつくしてしまう。
勢いの強い草は、種を飛ばしていたるところに進出し、根茎で増える草は人間に遠慮なしに、つる草はつるを伸ばして這いまくっている。


一、二本植えた草花が初めはひっそり咲いていたのに、年と共に繁殖して勢力を拡大し、他の草木を席巻している。
ニリンソウヒオウギアヤメ、ミント、ドクダミの勢力圏が拡大した。
庭がこのように多種多様な草木の園になると、虫も多くなる。
クモが巣をはる。アシナガバチも巣を作る。
カブトムシも土から出てきた。
庭を歩くとクモの巣が顔にひっかかるから、巣を避けてかがんだりして歩く。木の枝で取り払うのも、せっかく巣を張ったクモに申し訳ないから、やらないようにしている。
アシナガバチの巣は、建物の軒や壁や、植木鉢の陰、いろんなところにあり、危険だから取った方がいいと強く言われるものの、巣に直接ふれないかぎり彼らは攻撃しないからと、ぼくはできるだけそっとして見守ってきた。彼らもそれを感じているような気もした。
クモもハチも、その巣を作るのに、長い時間をかけ、ハチはひたすら子どもを育てている。
けれど、孫が帰ってくるとき、刺されたりしたら危ないということで、スマンと言いつつ、いくつか夜に取り去った。
虫も生きているのだから、彼らの邪魔はしたくないとはいっても、カミキリムシが白樺の幹に穴をあけて卵を産み、今年は枝も葉も勢いをなくしてしまい、ノムラのモミジの幹が空洞化して貧相な姿になってしまったのを眺めると、獲物を追う猟師の目になって、カミキリを見つけ次第つかまえてつぶしてしまったことが三度あった。
ライラックも幹に虫が入っているようだ。
アメリカシロヒトリの幼虫が、桑の木にも柿の木にも、クモのような白い糸で覆われたなかにいて、もぞもぞ動いているのを昨日発見した。放っておけば、木は丸ぼうずにされてしまう。これは幼虫が集まっているその部分を切り取って焼いた。
ジャガイモやナスの葉を食べてレースのようにしてしまうニジュウヤホシテントウは、六月七月に隆盛を極めた。これも見つけ次第つかまえて退治した。
人間は勝手なものだ。でも、しかたがない。


ご近所の庭に、去年彼岸花が咲いていて、
「やあ、なつかしい。大和の秋をいろどる彼岸花ですよ。」
と奥さんに言ったら、
「じゃあ、株をあげます。」
と言って、咲き終わったころに、株を持ってきてくださった。
これは楽しみ、あの大和の秋をここで見れたらと思い、それを庭に植えてあるが、そこには今までハンゲショウの白い葉がひしめいていた。
地面を眺めてみても、まだ彼岸花らしい花芽は見えない。
この九月、にょきにょき花を伸ばしてくるかな。そうなればいいな。
この辺りの田んぼ、畔には大和のような彼岸花は一本もない。
なんだか味気ない。