中国人実習生の若者たちが遊びにきた


日曜日、中国人実習生の若者たちが遊びにきた。
近所の企業で、実習生として働いている彼らは、日曜夜の、公民館での日本語教室に来ている人たちである。
午後二時が約束時間で、前の週に、我が家まで来る道順を地図を書いて説明した。
「ここにスーパーがあるだろう? この道を上っていって、二本目の道を右に曲ります。突き当たると左に折れて、少しいくと右に看板があります。」
こういう説明もまた日本語の学習になる。
はたして彼ら、間違いなく来るだろうか。
工房で支度して待っていたが、二時も間近になり、気になって、近くまで自転車で行ってみた。
来るのは、男性4人と女性2人。
間違いやすい曲がり角で自転車を止めて待った。



研修所で教えていた時は、架空の街の地図を印刷して、
「郵便局に行きます、道順を説明してください。」
と、一人ひとりに言ってもらったり、
「今から私はどこへ行くか当ててください。」
と言って、
「駅を出て、東に進みます。次の交差点で左に曲り、‥‥」
という調子で説明する。
「はい、警察です。」
「図書館です。」
地図にはいろいろな店の名前も書いてある。それで街歩きができるように練習する。


ひょっとして家に電話がかかってくるかもしれないと戻ってみたら、やはりかかっていた。
日曜日だけれど仕事がはいって、今終わったところで、これから行きます、ということだった。
また、自転車で近くまで行く。
そこへ女性2人がやってきた。彼女たちと、男性たちとは、会社が違う。
そうこうしているうちに、男性たちもやってきた。すいすい自転車で軽やかに来たところを見ると、迷いはなかったようだ。


「この工房、私が自分で造ったんだよ。」
みんなは吹き抜けの天井を見上げて感心している。
今日は日光がさんさんと降り注ぎ、日中は暖かい。工房は暖房も要らない。
彼らは、気を使わなくてもいいのに、手土産をもってきてくれた。
女の子は手作り餃子、男の子は中国の東京の店から取り寄せた、やはり水餃子だった。


工房に落ち着いたみんなは陽気におしゃべりする。
来年2人が帰国する。日本で働いてきて、旅行もしていない。帰るまでにどこかいいところへ行ってきたらいいなと言うと、
「軽井沢はどうですか。」
善光寺は?」
「そこまで自転車では一日がかりだね。電車で行くと、お金がかかるけれども。上高地へ行ったことがある?」
知らないということだった。
できたらそこがいいと思う。一日休みを取って、上高地で遊んでおいで。
「温泉に行きましたか。」
「行ったことがありません。」
「行きたいですか。」
「はい、行きたいです。」
「裸にならなければいけませんよ。」
「混浴?」
「いや、男女別々ですよ。」
混浴と言った21歳の王君、顔が赤くなった。
このまえフィリピンから来た女性が近くの温泉に行って、シャツを着たまま入って叱られた話をした。
「私たちのふるさとにも、温泉があります。」
「えっ、ある? 裸になりますか。」
「はい、裸になります。」
へえー、そうかあ、中国の河南省には温泉があるのか。


家内が準備してくれてあったホットケーキを、女性たちと一緒に焼いた。
アフタヌーンティー
「おいしいです。」
五時近く、リンゴと野沢菜をお土産に、彼らは帰っていった。
「今度、温泉に行こうな。また来てください。」
彼らは元気をくれる、楽しいひとときだった。