「住民投票の会」の署名運動が終わった



 「重要なことは市民が直接政治に参加して決めようではないか」の言葉で始まった「新市庁舎建設計画を住民投票で決めよう」という署名運動が、昨日で期限がきて終了した。
 組織も、資金も持たない市民たちが始めたこの市民運動は、安曇野市政がおかしいと直感したことから生まれた。
 安曇野市では、市長はじめ市議会議員の大多数が、新市庁舎の建設を推進してきた。少数の議員がそのことに反対してきたが多勢に無勢、既成事実はどんどん進められた。市長、副市長、推進派議員たちは、市民の声を聞くことはなかった。
 この一ヶ月が住民投票条例制定を求める署名運動の期間だったが、署名運動を担う公認の「受任者」と呼ばれるひとりに私もなって居住区の市民のお宅を回った。
 市庁舎建設に賛成する人も、反対する人も、市民の意志で決めましょう。これまで「市長と市議におまかせ」で来たけれど、そのツケはこれからの子どもたちや孫たちにかぶさってきます。これ以上借金を増やさないようにしませんか。



回ってみて思ったことはこんなことだった。
〇組織も広報の伝達手段も持たない市民の運動であるから、この運動を知らない人たちが圧倒的だった。
〇すでに新市庁舎は、建設が決まっているのではないか、と思い込んでいる人たちが多かった。
〇それでも訪問した8割以上の人が、新市庁舎建設に疑問を持っていた。
〇市長や市議会議員に対する不信感もかなりあった。
〇各戸を訪問して、今のその人の暮らしや心のうちや、市政などを語り合う場になった。人は語り合う場を求めている。
〇住民のなかに入って、市民の声に耳を傾ける市議もいるが、ほとんどの議員は、市民の中に入って市民に接し、市民から学び、市政に活かすことをしていない。選挙のときだけ顔を見せるにすぎない。


昨年末行われた市民グループによるアンケートでは、87%の市民が新庁舎の建設に反対し、多くの市民は総合支所の充実を望んでいた。
今年9月定例議会に提出された「建設の凍結を求める請願書」には8000を超える反対署名が添えられていたが、否決された。市民に選ばれた人たちなのに、市民の意見に耳を傾けようとしない。
 市の広報誌(月刊)は、「秘書広報課」が編集している。そこには新市庁舎建設に疑問を投げかける意見はいっさい報道されない。本庁舎建設が計画通り進んでいるという建設推進の記事ばかりだ。まさに市長秘書室の広報誌という性格になっている。


 住民投票の会の署名運動は終わった。
 署名簿は市長に提出される。
 そして議会にかけられる。
 今の議会ではまたも否j決となる可能性が高い。


住民運動をやってみて、反省する点や考える点がある。
□もっとやれたのに、途中自分の動きが止まっていた。それは居住区に運動仲間がおらず、自分一人だけの動きだったせいでもある。
□「住民投票の会」は、組織体をしっかりと確立し、運動開始の集会を開いてスタートすべきだった。
□運動している仲間との交流が必要だった。メールや紙面で情報を交流するシステム・手段があればよかった。
□この運動をこれで終わりとせず、市民の行政参加の始まりとすべきである。行政が押し切っていったとしても、この運動は無駄ではなかった。
□議員の多くは「政治家」というよりも「政治屋」だ、という言葉を聞くことがある。ならば、手弁当で、ただ働きで、市民の暮らしを見つめ、必要な政策を考えていく市民レベルの組織をつくる必要がある。市民の目線で行政を監視し、批判し、支えていく、もうひとつの社会運動体、安曇野市民会議(仮称)を立ち上げられないか。