久しぶりの山道

「小さな同窓会」があって、十人の旧同志たちが、ピラタスの丘の「ひこう船」に集まった。
波乱に富んだ夢の、「梁山泊」か「井岡山」か、胸躍らせたそれぞれの人生を振り返り、
希望と矜持、悔恨と責任、
自由奔放に話は夜中の3時まで続いた。
翌朝、秋は喨々と、山も空も晴れ渡った。
登ってみよう、どこか。

 昼前、蓼科山に向かう。八ガ岳の北にそびえる2530メートル峰。
 なつかしい山の道を歩く。道標の古いのと新しいのと。
 白樺。小鳥の声もわびしく小さい。歩く身体のなかに、昔の体験が残っているjことを感じる。
 熊笹の原を越すと、岩ごろごろの急斜面になった。
 老白樺が静かに立っていた。たった一人の山。山の気がぼくを包み込む。
 頂上が見えた。立ち枯れの樹が縞模様をつくっている。
 紅葉が始まっている。落葉松も黄葉近し。
 頂上まで登り切るには時間が足りなかった。頂上を見ながら引き返す。山道の岩から岩へ足を置いてバランスを保ち、下っていく。まだやれる。ぼくの体は山を憶えている。自信が芽生えた。




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