アグネス・チャンと歌の力

毎年「緑の日」は不思議にいい天気になる。今年も、雪の常念岳が青空にそびえたち、鯉のぼりが泳いでいる。
イワオさんの車でアルプス公園に向け8時40分に出発した。今日は「早春賦音楽祭」、愛を込めて、震災地に歌をとどけようと、この日に向けて練習してきた合唱を発表する。安曇野市民合唱団の今年の名称は、「BELIEVE隊」。
今年のテーマは、「歌で励まそう、被災地に春をとどけよう」だった。
公園は、シャクナゲユキヤナギがほかほかと咲き、チューリップの花が鮮やかだ。ちょうど木々の芽ぶきも重なって、なんという美しさだろう。
オープニングの演奏の中に入って、松本市民合唱団と地元中学校の合唱部と合同で、「早春賦」「BELIEVE]「大地讃頌」「安曇野」の四曲を歌った。
そこから後、夕方まで、広い公園内に作られた5箇所のステージをめぐり、他の演奏家ブラスバンド、合唱団の演奏を聴き、そして歌った。


午後のCステージに、アグネス・チャンがやってきた。
Cステージは野外ステージで、常念岳を眺めながら歌う。
チャンは、震災後ユニセフの活動の一環で、同時に自分自身の活動として、被災地3県に入り、被災者をなぐさめ、はげましてきた取り組みを、歌の合間に語った。
「私いつのまにか三人の子どもができていました。」
チャンは三人の子の母親となっている。
そしてユニセフ大使として世界で活動してきた。
チャンの心にはいつも不幸な子どもがいる。


東日本の被災地で、チャンの手を放さず、ずっと避難所の中を一緒に回った4歳の子のことを語った。
別れ際にその子は、ポケットから自分の全財産の10円玉と1円玉とを取り出し、それを義援金に使ってと言ってチャンに差し出した。
自分自身、家族を亡くし、家をなくした被災者であるにもかかわらず、その金を不幸な子どもたちのために使ってと言って、受け取ろうとしないチャンに渡そうとした。
チャンは思わず胸つまり、子どもを抱きしめずにはいられなかった。


チャンはまた歌の力を語った。
被災者たちに届く歌の力がある。


歌の力、
人間の力、
人の心に生きる力を生み出す力。


この日、歌の力と人間の力を感じ、思う日だった。