シンちゃんは、近々また被災地へボランティアで行くという。
５月３日に、自分のブログにこんなことを書いていた。
「Ｙ君、もう一ヶ月以上になりますが、今日から気仙沼に行ったようです。
とっちゃん、あみちゃん、4／28に出発。石巻で炊き出ししてたようです。今日帰宅予定。
しゅんじ&浅野さん。4／2日出発。とっちゃん、あみちゃんを引き継いで炊き出しやるようです。
大ちゃん、今朝白馬の仲間達と石巻に向かった模様。
まこちゃん、長岡より被災地入りの予定。
Ｏさん、3／28に出発した筈です。
5／11〜17 シン&みお、Ｋ、被災地に行きます。多分岩手になりそう。
瓦礫撤去、避難所のケア、ボランティアセンターの手伝い、掃除、等、仕事内容はいろいろみたいです。女性ボランティアのニーズも多いようです。」
４月15日にはこんなことを書いていた。
「夕べ被災地から帰ってきた。
今日は友人達と今年から借り始めた田、パーマカルチャー式稲作。苗床に種まき。
種もみを撒きながら、田んぼのみぞを掘りながら、
僕は何故被災地へ行ったのか。その押さえきれない気持ちは何だったのか。
解った気がした。
僕は本当は誰か困っている他人の為に働きたかった訳ではなかった。
誰の為でもない、自分の為の仕事だった。
この世界は全て自分自身。この世界は全て自分の心。地震で傷ついたのも、原発で傷ついたのも、僕の心。
そこで苦しんでいる人達も、僕の心。
僕は傷ついた自分を癒しに女川・石巻まで出かけて行ったのだ。
僕は自分の心のゴミ出し、心のヘドロ出しに行ったのだ。
そして今、自分の心に種を蒔いている。
全て、この世界全て、自分だったんだ。
実り多い旅でした。」
シンちゃんは大工、そしてアマチュアのミュージシャン。奥さんのみおさんはインド舞踊家。
そこへもってきて、農も始めたのか。
被災地から帰ってくると、自分の仕事もしながら、ライブをやったり、ボランティ活動の集会をしたり、
若い彼らは、組織に属さないだけに縛られることなく、自分の意志に素直な生き方をしているなと思う。
彼らは組織に属さないけれども、人と人との心のつながりに生きている。
それがある意味、組織以上の働きを生む。
そこに生き甲斐も感じている。
喜びもある。
東京浅草の、人力車引きの車屋のおじさんが、子どもの日、被災地に人力車をもって行って、子どもたちを乗せて走った。
子どもたちの笑顔、
その笑顔がうれしくて、やってきた甲斐があったと、おじさんの笑顔。
そういうボランティアもある。
被災地へ救援に入っていたアメリカの兵士が、仙台空港から去っていくとき、飛び立ったヘリコプターの下、地面に「ありがとう」の文字を見た。
被災地の人たちの、物を並べて作った文字だった。
「ありがとうという言葉は、 こちらが言いたい言葉です。」
と、彼は言った。
軍人の一人がこんなことを言ったのが心に留まった。
「私は、こういうことがしたくて、軍に入ったのです。」
人を殺すために兵士になったのではない。
人を助けるため軍に入ったのだ。
しかし、軍隊は非情な組織だ。
9・11テロの首謀者だというオサマ・ビンラディンを米軍が殺害したというニュースが、数日前に流れた。
報復の歓喜に沸くアメリカ民衆の姿もあった。
その一方で、喜ぶことの出来ない人びともいる。
この作戦はまた新たな報復につながる懸念もある。
1929年、雑誌｢改造｣に発表された、中野重治の「雨の降る品川駅で」という詩で、
「辛よ さようなら
金よ さようなら
君らは雨の降る品川駅から乗車する
李よ さようなら
も一人の李よ さようなら
君らは君らの父母の国にかえる
君らの国の川はさむい冬に凍る
君らの叛逆する心はわかれの一瞬に凍る 」
と詠いだし、最後に、
「行ってあのかたい、厚い、なめらかな氷をたたきわれ
ながく堰かれていた水をしてほとばしらしめよ
報復の歓喜に泣きわらう日まで」
と呼びかけた。
朝鮮半島を日本の植民地にしていた時代、
ひとりの日本人作家が朝鮮の民に思いをはせて詠った。
中野は「報復の歓喜」と詠ったが、
報復の歓喜と解放の歓喜とは、全く異なる。
報復の歓喜は、怒りと憎悪にもつづく。
解放の歓喜こそ人間の願いであり、祈りである。
シンちゃんがこんなことも書いていた。
＜この世の中には確かに「悪魔」が存在する。
悪魔とは断固として戦わなければ、と思う。そう思っている人も多いだろう。
だけど怒りの武器を持って戦ってはいけない。
怒りは悪魔の武器だから。
僕たちが怒りを持った瞬間、悪魔はほくそ笑むのだ。それは悪魔の思うつぼなのだ。
きっと悪魔は原発を推進したい訳ではない。
悪魔は、僕たちを怒らせたいのだ。
怒りを持った途端に僕たちは負けてしまうのだ。
だから僕たちは「愛」という武器を取ろう。
そして断固として悪魔と戦おう。
虹の戦士達。崩れゆく過去にしがみつくな！
未来はもう始まっている。＞
