タマネギとニンニク

 いつまでも雪に覆われたままのタマネギとニンニク、気になってクルミの木のある畑に行ってみた。今日は温かく、雪も融けそうだ。木灰と鶏糞を自転車の荷台に載せて出かけた。畑へ入る小道は通学路になっている。そこにはまだ雪があり、自転車を押していったら、ランドセルを背負った小学生の女の子に出会った。
 「こんにちは」
 女の子の方から先に、にっこりあいさつしてくれた。
 「おかえり、この道歩きにくいね」
 女の子はまたにっこり笑って「はい」と答えて通り過ぎた。
 畑の東側に生えているクルミの木はまだ冬眠状態だ。自転車を道に停めて、冬中放置してあった畑を見わたす。部分的に雪が融けているところもあり、ニンニクの苗が何本か見えた。ざくざく音を立てて雪を踏み畑に入る。やっぱり寒さと雪のせいか、たくさん苗が消えている。タマネギのほうも、生き残っている苗が少ないようだ。唐沢さんからは追肥尿素がいいと聞き、巌さんからは2月中に追肥をしなさいと聞いていたが、やっぱり天然の有機肥料をやりたいから、いま家にあるのを持ってきた。木灰を入れた袋を自転車から下ろし、袋を雪の畝において薄く撒いていった。これで雪も融けるだろう。さらに鶏糞を畝全面に薄く撒く。いったいどれだけ苗が残っているのか、雪がなくなると分かるが、たぶんひどいもんだろう。苗が土の上に飛び出し、白い根が露出しているのが何本もある。雪が積もる前に霜柱がたって土を押し上げ、そのときすでに苗は土から分離されていたのだと思う。
 土の上に出ていてまだ生きている苗を土の中に差し込む。雪が積もっている部分の下にある苗はどんな状態なのか分からない。こういうふうに苗がやられるということは、根が土に十分下ろせていないからだろう。ということは、苗作りと定植した土に問題がある。タマネギは、植えつける苗の大きさが鉛筆の太さぐらい(太さが7〜8mm)がいいと言う人、5mmぐらいの太さの苗を植え付けましょうという人がいる。いずれにしてもある程度太くしっかりした苗がいい。タマネギは苗で決まるともいう。太すぎてもだめ、細すぎてもだめ、太すぎる苗だと寒さにあってネギ坊主ができてしまう。細い苗だと寒さで傷みやすい。タネまきは9月の中旬前後だが、早すぎるととう立ちの危険性の高い太すぎる苗になり、遅すぎると寒さで枯死する危険性のある細い苗になってしまう。
 望三郎君の住んでいる、安曇野でいちばん標高が高く、気温も寒い小倉地区では、タマネギはあまり植えないと言っていた。同じ安曇野でも豊科はタマネギの産地だ。ほんの少しの距離の違いなのに栽培に違いが出るらしい。
 今ぼくの植えている苗も、細い苗だった。種まきの時期は、9月中旬だったと思うけれど、その後の生育がよくなかった。土の状態と気温の状態が原因だ。ニンニクは、球根のように見える鱗茎を割って、その小球を土に埋めるが、小さな小球は育ちが悪い。大きな鱗茎の大きな小球を、有機分の豊かな土に植えれば、春になってよく育ち、大きなニンニクが採れる。去年から借りて使っている畑は、土づくりもできていない。育ちが悪いうえに、この寒さと雪が応えた。