とうとう手術となった



医師は女医さんだった。
「自覚症状が出てきたのは一年ほど前ぐらいですか。どんな症状でしたか。」
「食べたのを飲み込むときの抵抗感と、咳払いがときどき出るのと。」
それで町の医者に診てもらうと、できものができている、手術したほうがいいと、病院を紹介され、
その病院の医師に診察してもらった結果、手術ということになったのだけれど、
新型インフルエンザが流行期に入るという報道が盛んになり、病院に新型インフルエンザ患者があふれるようなことになったらやばいなあ、と手術を延期して、そのままずるずると。
先の二人の医師は、優秀な医師ではあるのだろうけれど、なんとなくそっけないクールな感じで、親しみが湧かなかったから、
もう一度診てもらう気にならなかった。
悪性ではないとのこともあったし、日常生活に特に支障もなし、これは自然治癒力で治してやろう、わが生命力で取り去ってやるぞと、
ホメオパシー医療、気功法、体温上昇温熱療法、漢方の煎じ薬、ホ・オポノポノ、いろいろ本を読んだりしてやってみていたところへ、
息子夫婦が、セカンドオピニオンを得たほうがいい、今はセカンドオピニオンを医師たちも推奨しているからとアドバイスしてくれて。
症状もなんとなく気になっていたから、
診てもらうなら地元のこの病院のこの医師と決めた医師のところにやってきたのだった。
内視鏡を喉に入れて診察し、
「嚢腫のようですね。この丸いの、ぶらんぶらんしていて。悪性ではないですよ。」
「それが気道に入り込むと窒息?」
「その危険もありますね。」
医師の丁寧な、安心できる話を聴いているうちに、もうここでこの先生に手術してもらおうと、心に決めた。
「ここで手術してもらえますか。」
「いいですよ。」
というわけで、セカンドオピニオンを聴きに来て、即刻手術とあいなり、翌月の手術入院の日取りまで決定してしまった。


検査の日。
「たばこは吸いますか?}
「吸いません。」
「お酒は飲みますか。」
「ほんの少し。」
「毎日ですか。」
「まあ、毎日ぐらいですかなあ。」
「少しというと、どれぐらい? ビールですか。」
「焼酎のお湯割りでね。」
そうだなあ、お湯の中にちょろっと入れて、あれ、どれぐらいと言ったらいいのかなあ。
いい気分になることも、酔うこともないし、気分的なもんだから。
お湯割りといったら、お湯と焼酎が半分半分ぐらいだろうけれど、ぼくが飲んでいるのは、
焼酎の味がする程度で、焼酎が入っているなと思える程度で。
若いころはよく飲んでいたけれど、今はあまり飲みたいとも思わない。
「まあ、3ccぐらいですかな。」
「3cc?」
看護師さんは「へっ?」という顔をした。
アレルギー症状とかこれまでの病気とか、手術前の事前調査をした後、診察室に入った。
血液検査や心電図などの結果診察を見ながらの話になった。
「お酒は飲みますか。」
「少し、杯にい一ぱいほど」
「3ccほどと書いてありますが。」
「はあ、3ccほど」
手術前の説明ということで付き添いで横にいた家内が、
「3cc? えー? うっそー」
なんて言うから、
「3ccほど、ワッハッハッハ」
と笑ったら、医師も看護師も、みんな大笑い。
「3cc言うたらねえ、小さなスプーンにいっぱい程度ですよ。」
と家内が言う。
いや、いや、そんなに少ないか。


笑いが生まれる診察室。ここで10日に、手術です。楽しみです。