「安曇野の牧に、草競馬があるだ。このあたりじゃ、塩尻のタカボッチの草競馬もあるがね。
農耕馬が出て、おもしろかったね。反対方向に走ったりしてね。」
と、以前に地区の人から聞いたとき、へえ、そんなものがここにあるだか、
へえ、それは見たいもんだ、と思った。
「最近は、サラブレッドが中心になってきて、もひとつだ。昔のほうがおもしろかったね。」
という話だったが、それ以後情報がとんとないから、
すっかり忘れていた。
先日、牧に通じる道の交差点に看板が出ていて、10月10日に草競馬があるという。
これはしめた、行ってみるだと、家内と北海道から遊びに来ている家内の友人と3人で朝から出かけた。
牧地区に入り、山すその方へ上がっていくと、里山を背後にして芝生のグランドがあった。
こんなところに、へえ、市営のこんなきれいなグランドがあったんだ、しらなかったねえ、
観客席も芝生だ、景色もいいねえ。
サッカーのゴールがあるところを見ると、サッカー競技もできるようだ。
木々は紅葉しかけている。
予選が始まっていた。
馬って、きれいな姿をしているなあ。
トラックには、砂が敷かれている。
騎手が乗った馬が疾走する。
初めは競走馬の予選。
続いてポニーの予選。
小学生の乗ったポニーのなかには、走りたくないよ、というのもいて、
とぼとぼ歩くかと思えば、
止まってしまうのもいる。
手綱を飼い主のじいちゃんが引っぱらなければ動かないのもいる。
一頭、すごく速い競走馬がいた。
それがカーブを曲るときにコースからそれ、騎手があわてて止めようとするが、馬は止まらない。
騎手はあわてて馬から飛び降り、手綱を放してしまった。
馬は、フィールドから観客席へのりを駆け上がり、興奮して動き回る。
逃げる観客。
飛んできた馬主が取り押さえてことなきをえた。
一周目は走った。
二周目、馬はしんどくなった。
おれ、いやだ。
子どもの騎手が足で蹴るが、馬は言うことをきかない。
最後まで歩いてゴール。
スタートからずっとおじいちゃんが手綱を引き、
孫が騎手のポニーは、
3周目になって、歩くことを拒否した。
じいちゃんが手綱で馬の首をばしばししばくが、
ポニーは首を振っていやいやをする。
とうとう孫は馬から下り、じいちゃんがいやがるのを引っぱっていったら、
反抗したポニーは走り出し、逆にじいちゃんが引っぱられて走らなきゃならなくなった。
馬にも感情はあるわさ。
退場。