種まき


 ソバの花と安曇野


ほうれん草の種を蒔いたところに、うっかり白菜の苗を移植しようとした。
あれ、おかしいな、
移植ゴテで白菜の植え穴を掘った土のなかに、
ほうれん草の種がある。
あ、そうだった。
ここにほうれん草を蒔いたんだった。
ほうれん草の種からは、まだ芽が出ていない。
それなのに、あの独特の菱形みたいな、三角形みたいな種から、
つーっと細い白い根が一本伸びている。
2、3センチの根、
ああ、種というのは、こうしてまず根を先に伸ばし、
水分を吸収できるようにして、
生命維持装置を完成させてから、芽を伸ばしてくるのだ。
種が水分を吸収して、それだけで芽を出してくるのではない。
芽を出せば、太陽にてらされ、
風に吹かれて、
光合成もする。
目に見えない根っこがそれを支えているのだ。



今はゴーヤが植わっているその根っこの周辺に、
この春に信州大根の種がこぼれ落ちたのだろう。
たくさん芽が出てきた。
密集したその一部を、スコップで掘り起こし、
一本一本隣の畦に、移植してみた。
そしたら、水をやってはいたものの、
かんかん続く日照りのなかで、大根の葉はたちまち枯れ、
移植は失敗した、
と思っていたら、
なんのこと、
雨が降ったりして水分が行き届いたのか、
大根の根っこは生き残って、再びまた枯れた葉っぱの後から芽を出し始め、
今では元気な葉を広げ始めている。
信州大根の、別名ネズミ大根と言う種類、
大根おろしにすると、とても辛く、それがまたいい。
漬物にもいい。



9月10日ぐらいまでに、タマネギの種を蒔くだよ、
とヒデさんが言っていた。
培養土でもなく、この春ニンニクを収穫した庭の土に、
草木灰と鶏糞をほどこし、
少し寝かせてからタマネギの種を蒔いた。
苗床は夏の間、草が生い茂っていたところ、
毎日水遣りを欠かさず、
様子を見ていたら、
細い針のようなタマネギの芽が、頭の先に種の殻を載せて、
土の中から伸びてきた。
それとともに他の草の芽もいっせいに出てきて、
苗床は、たちまち両方が共存する形になった。
双葉の草の芽を今遠慮してもらおうと、指でつまんでとっている。


青首の宮重大根の種は、順調に発芽した。
何本か、根本からちょん切られているが、これも仕方がない。
根きり虫か、こおろぎか、
なんだろう。
野沢菜も芽を出した。
大きくなれば野沢菜漬けにするが、
小さい間も間引き菜にしていろいろな料理につかえておいしい。
ほうれん草の畑には、畔焼きした灰をもらってきて入れた。
酸性ぎらいのほうれん草も元気に育ちそうだ。


去年おいしくよく食べた山東菜、これは昨年の余り種を蒔いたら芽が出た。
結球しない白菜とも言われている。
余り種というのは、発芽率は落ちるだろうが、それでも芽を出す確率は高い。
飛騨の赤カブも余り種から芽が出た。
一袋いくらで種を買ってくるが、植える畑は小さい。
種は余る。
もっと少量の袋で販売してくれたらいいのだが、
だからぼくは、一袋141円というのを買ってくる。


9月は冬野菜の種まきの季節だ。