ハクセキレイがいなくなった


家の外側にある納屋の、
屋根下のすき間から出入りしていたハクセキレイの姿が見えなくなった。
巣づくりしていたのに、ぱたっと姿を見せなくなった。
卵を抱いているのかなと初めは思ったが、それにしては姿を見ない日がこう何日も続くとあやしくなってきた。
あたりを眺めてみると、ハクセキレイらしい鳥の姿もない。
どうしたんだろう。
洋子の推理は、気温の高かった日が数日続いたとき、半透明の屋根材の下の巣はとても暑かったのかな。
この高温では卵を温めることができないと、巣を放棄した。
ぼくの推理は、
他の動物に襲われた?
その納屋に、以前リンゴを入れたコンテナを置いていたら、ネズミがリンゴをかじりだした。
かじったリンゴをとりのぞくと、翌日またリンゴがかじられている。
一個かじって、また別の一個をかじって、と数が増えていった。
ネズミはどこから入ったのか、調べてみたら、土間の下、土を掘ってトンネルをつくって侵入していたのだった。
一年ほど経って、納屋のがらくたのなかに、ネズミの頭蓋骨があった。
食べ物がなくなってから脱出できずに死んでしまったらしい。
ところが、この春、ガレージの下に置いたコンテナを取り除けたら、その下の地面がくりぬいたようになっていて、トンネルに続く隠れ家があった。
そして棚の中からまたひとつの頭蓋骨が見つかった。
ネズミにしては大きいように思ったが、ほかに動物がいるとも思えない。
ひょっとしたら野良猫の子どもかもしれない。
つづいて納屋の中のジャガイモを入れた箱などをのけてみたら、その下の地面を掘って、ネズミの巣らしいものがある。
いずれも地面のなかのトンネルに続いている。
これははたしてネズミなのかモグラなのか。
しかしモグラが建物のなかに巣をつくることは考えられない。
やはり野ネズミかハタネズミだろう。
これは油断ができない。
コンクリートを敷いていないガレージと納屋だから、土の下を掘れば、動物は自由自在に入ってこられるというわけだ。
ハクセキレイは、ネズミに襲われたのかな。
ネズミなら、天井の際の巣まで上っていける。
襲われる前に、何らかの危険を察知して避難したとも考えられる。


昨日から、カッコーが鳴きだした。
いつも今ごろ、渡ってくるカッコー、
鳴き続ける声が、朝のさわやかな空気をいっそうさわやかにする。
すぐそこの電柱で鳴いているのだが、その声は空の奥で鳴いているように聞こえる。


巣立って間もないスズメの子が、親を呼んで鳴いている。
まだ充分飛べずに、地面に降り立って、地面をぱたぱたと跳びはねながら鳴いている。


水田のカエルの大合唱は夕暮れのコンサートだ。