セキレイが巣づくり




我が家の物置のなかに巣を作っているのはハクセキレイらしい。
セグロセキレイと、ハクセキレイの区別がこれまで厳密にできなかった。
ひじょうによく似ている。
顔の白と黒の色の部分が違うのだが、
それが微妙だ。
今回調べてみて、巣づくりはたぶんハクセキレイだと分かった。
物置の屋根と壁の間にすき間があり、そこから小鳥が入り込んで、
つーっと奥まで飛んでいく。
少ししてまた出てきて、すき間から外へ飛んでいく。
何をしているのだろう。
観察していて、巣づくりだと判明した。
物置の奥の屋根際に、棚があり、
そこにいろんな道具類が置いてある。
そのなかに、やっこさんたち巣を作っているのだ。
畑を耕すと、かならずセキレイはやってきて、
何か獲物はいないかとさがして、くちばしでほじくりだしているが、
このごろ枯れ草やら草の根っこなどを集めては、運んでいる。
ちっとも人を恐れない。
ぼくの顔をすぐ1メートルほどのところから見つめていて、
あのね、私たち、ここに住むからね、
というような顔をしている。
まったくへっちゃらなのが、かわいい。
あんたなんか眼中になしよ、とばかり、
頭の上を飛びこして物置に入っていく。
入る前に、いったん半透明の波板のひさしの上に降り立ち、
とことこ歩いて、物置のすき間に入る。
ちっちゃな足が軽やかな音を立てて、移動していくのが、
ひさしの下から見える。
巣がどのあたりにあるのか、まだ見ていない。
あのあたりだなあ、と思うが、
見に行けば警戒するから、やめとく。
一度巣に近づいたとき、セキレイさんは、ひさしの上から、注目していた。
ごめんごめん、
何もしないよ。


子どものころ、モズが大きなツバキの木のなかに巣を作っていた。
どんな巣かな、と中をのぞきに行ったら、
それを親鳥が見ていた。
巣の中に、いくつか卵が産んであった。
かわいい、きれいな巣と卵だった。
ところがそれから親鳥は、巣に帰ってこなくなった。
巣を放棄したようだった。
卵はいつまでも巣の中に残っていた。
友だちが、巣が危険だと思うと、親は巣を見捨てるよ、
と教えてくれた。


今年のツバメさんは、巣づくりが速かった。
ためらうことなく、去年の巣のあとに新しい巣を作った。
そしてもう卵を抱いている。
人や犬のランが巣の真下にいても、警戒することなく、
今年の仕事の子育てに入っている。
ツバメさんは、人からよく見えるところに巣をかけ、
ハクセキレイさんは、奥まった秘密の場所に巣を作っている。
ツバメさんの巣の下には、糞が落ちる。
そこで巣の下には糞受けのダンボールを置いている。
ハクセキレイさんの巣ができて、ヒナがかえったら、
糞受けの置き場がない。
糞の始末をどうするかな。
これはもうなるようにしかならない。
棚の上は糞だらけになるかもしれない。


ハクセキレイさんがこんなに人間に近づくとは、
これも環境の変化で、それに適応してきたせいかな。
調べてみたら、ハクセキレイが近年、建築物に巣を作るケースがあるということだ。
道を歩いていて、路上に下りてくるのは、たいていハクセキレイだ。
人間の暮らしに近づいてきている鳥なのだ。