ツバメの巣にスズメ?

 

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 ツバメの飛翔する姿を見ることが少なくなった。田んぼの上を低空飛行するのも一羽とか二羽とかだけで、群れ飛ぶ姿がない。

 十数年前、安曇野に引っ越してきた時、家の前住人が、軒のツバメの巣を除去した跡が残っていた。そこに住んで一年後、ツバメが戻ってきて巣をつくった。ヒナがかえり、玄関の前にしきりに糞を落とした。無事子ツバメは巣立ちし、翌年も楽しみになった。ところが次の年から、ぱたっとツバメは来なくなった。飛んでいる個体数も少なくなっている。

 日本野鳥の会が、ツバメの調査をしていた。モニターを募集していたからその一員になった。野鳥の会は、イギリスで作られたという粘土の素焼きの巣を一つ送ってきてくれた。それを軒にくっつけ、ツバメを待った。だが、ツバメは巣をつくらない。そして月日が流れた。

 今年、素焼きの巣から二羽のスズメが飛び立つのを見た。玄関を出入りする人間の頭上、数十センチのところに素焼き製の巣はある。そんな近い所にスズメが来るか? それはないだろう。そう思っていた。

 ところが、素焼き製の巣にいつのまにか、枯れ草かワラかが運び込まれて、鳥が巣をつくっているらしい。巣の下に、糞も落ちている。けれどツバメの姿はない。ツバメなら、田んぼの土を口に含んで持ってきてくっつけるはずだ。

 おととい、鳴き声がするよと、家内が言う。

 「鳴いている、鳴いてる」

 ぼくは耳をそばだてた。

 「聞こえないよ。」

 「鳴いてるよ。ほれ、ほれ。」

 神経を集中すると、かすかにチッチッという声が聞こえた。やっぱりヒナが生まれているらしい。それにしてもこんな小さな巣に干し草をたんと入れ、いったいヒナの入る余地ははあるのかと思うが、一羽なのか二羽なのか、ヒナは生きている。

 昨日、親鳥が餌を運んできた。やはりスズメのようだ。ツバメと違って、人間の姿が近いと親鳥は警戒して寄ってこない。隠れて見ていると、飛ぶ姿はスズメに違いない。

 さて、この後、ヒナの育ち、どうなるか、ちょっと楽しみ。スズメなのかツバメなのか。