棟上げ近づく



もうすぐ棟上げ。
予定日は来週。
大工の大ちゃんが、友人から足場を借りてきて基礎の周りに設置してくれた。
今日は朝から晩まで、梁、棟木、母屋、桁などに炭塗りをした。
古家を解体していた近所からもらってきてあった古材の梁を、
大ちゃんが工房の梁に使うためにうまく細工してくれた。
それに黒い色を着ける。
昨日、ホームセンターで見つけた塗料が、炭塗料。
書道の墨汁を水で薄めて使おうと考えていたから、こんな塗料があるとは知らなかった。
炭の粉末と天然樹脂と水を混ぜ、よく練る。
それを土台、梁、畳の下などに塗布すると、防腐、防虫、除湿、防臭に効果があると説明文にある。
それに天然の原料だから安全。
粉末炭も樹脂もそれぞれ3キログラムあり、塗り面積は60㎡。
価格はまあなんと500円だった。
金属製の容器に材料を投入して使う。


ここ2ヶ月ほど、
屋根をどう作る?
フローリングは?
壁の板は?
と、あれやこれやインターネットを検索したりホームセンターを訪ねたりして、安くていいものを探してきた。
外壁は、ホームセンターで格安で売っている杉の野地板を、
よろいばりにする方針は変わらないが、床と屋根で二転三転した。
インターネットで探したら、島根の森林組合がつくっている杉材が見つかり、見積もりを取ったら目玉が飛び出た。
これはとんでもない、やっぱり遠すぎたとお断り。
千葉のネット販売の木材店が、安い品を掲載していた。
いちばん安い桧を依頼すると、売り切れとかで、別のものをやりとりして、
野地板、内壁の杉と桧を取り寄せることにした。


屋根はどうする?
ホームセンターで見つけたアスファルトシングルという、薄くて軽い、1枚がかわらの2倍ほどの大きさの屋根材が、
素人でも工事がやりやすそうだったから、
これにするかと考えた。
近所で家庭菜園をつくっている、板金業のKさんに相談してみた。
Kさんは屋根葺きが専門、
「このあたりじゃあ、アスファルトシングルは、やめときましょ。
この前降った雪があるでしょ。ああいうのがよくないだ。
長持ちしないよ。
自分で作るなら、波板でいいでしょ。波板にしましょ。」
Kさんに頼めば、良心的な価格で、体裁のよい長持ちのするいい屋根を葺いてもらえることが分かったが、
それじゃまた多額の出費になる。
結局、Kさんの忠告を受けて、ガリバリウム鋼板の波板にすることにした。
これなら安くて強く、長持ちする。
体裁は、いかにも納屋、
窓サッシもほとんどリサイクル物と中古のもらいもの、
それが初めからの計画だった。
外見より中味だ。


10年前、フリースクールを造ると決めてやってきたが、
自分の力及ばず、
今に至った。
それでも建物を建てよう、
工房兼学習室を、と考え、
工房では洋子が「柿渋染め」教室を計画している。


具体的な行動については揺れもし、停滞したものの、
派生的な広がりはあった。
ここに来て、これを建てている今も、
これでいいのか、
お前は今何をしているのか、
これから先、展望はあると思うのか、
とささやく声がする。
気持ちはもぞもぞとうごめき、
左右に針は動くが、
それでも形が現れたら、
次のステップを描けるだろう。
描けばまた見えてくるものがあるだろう。
湧いてくるものがあるだろう。
人生、先は知れているが、
可能性をとどめるまい。
何歳になっても可能性は存在する。