大量解雇、大量失業

michimasa19372008-12-19





「牧場かあ」
青年はそう言っただけ。
結局ハローワークで提示されたその話に乗らなかったようだった。
         (NHKの特別番組「クローズアップ現代」を観て)


派遣切りと呼ばれる派遣社員の解雇がすさまじい。
北海道苫小牧の自動車関連企業で働いていた派遣社員の青年は、
仕事も宿舎もなくなって、ハローワークに仕事を求めてきたのだった。
示された牧場の仕事は、馬だったかな、飼育作業員のようだった。
「牧場かあ」
頭をかかえている。


その夜、彼は友と話している。
「ホームレスになるしかないかなあ。」


ふーっと頭をよぎった思い。
どうして都会の仕事にこだわるんだ。
どうして牧場へ行ってみようと思わないんだ。
今を生きるためには、選択肢を広げなければならないじゃないか。
やってみたら、道が開けるかもしれないじゃないか。


「やりたい仕事」と「やれる仕事」、
派遣社員でいるかぎり、その条件にあった仕事を見つけるのは難しい。
「やれる仕事」というのは、自分の能力や技術がからむ。
企業にとってその場限りの「道具」に過ぎない派遣労働についているかぎり、
能力を高め技術を習得することは難しい。
派遣を切られた人がよく言う「自分には技術がない」。
技術を身につける機会がなかった。
「やりたい仕事」、自分の夢。
それは遥かに遠い。


だったらなおさら模索をし、
領域を広げるチャレンジをしなければ。
「やれない」「やりたくない」をチェンジしなければ。


この前、地元自治会の異文化交流会 <私の町の人権学習> で、
安曇野に住む外国人の話を聞いたとき、
カナダ人のSさんは、こんなことを言った。
カナダでは、若い人は多く起業にチャレンジしようとする、
自分で仕事を生み出していこうと。
ところが日本では、企業に雇用されることを考える、と。
Sさんは、日本語も分からず、金もなく、ひとり日本に来て、働いて今の生活を築いた。
日本人女性と結婚し、子どもも生まれ、仕事も得た。


今、工房づくりで棟上を手伝ってもらっているダイちゃんに、
大量失業者の話をしたとき、
ダイちゃんは、
「農業に就いたらいいんだ」
とぼそっと言った。
ぼくはそれに対して、
「しかし、就農するにも、土地も住むところもなしにできないよ。」
と言ったが、地方の市町村では、農林畜産に就く人を支援する制度もある。
なんらかの可能性はあるかもしれない。
ログビルダーになりたいと10年前から夢を追って、
夏場は北アルプスの山岳パトロールのアルバイトをやったりしてきたダイちゃんにしてみれば、
都会の若者にはチャレンジ精神が足りないのでは、という思いもあろう。


この社会、この世界の問題、
行政や企業の問題が最も大きいが、
この危機をチャンスにして、視点を広げ、
狭い選択肢を広げるために、自分の観念を変える。
手も足も出ない状態から脱出するチャレンジをやってみてほしい。


タカオ君のところで農業の見習をやってきたアキラ君は、
来年、海外青年協力隊のメンバーとして、農業支援で出かけるはずだ。
海外を舞台にする夢。
夢は海外にもある。


職を失い、路頭に迷いかけている若者たち、
夢を持ってほしい。
夢を失わないでほしい。