賞味期限切れを捨てる痛み

michimasa19372008-12-15



 

16歳、女子高校生の投書でした。
いい教材になると思いました。


「私はケーキ店で10月からアルバイトを週に3、4回しています。
毎日、多くのケーキやアイスクリーム、お菓子を捨てています。
大学生の先輩は、
『慣れちゃった』『しょうがないからね』。
でも、入りたての私は罪悪感が消えません。
 ケーキなどの生菓子は、作った翌日の閉店時に廃棄処分することがルールです。
食べたり、持ち帰ったりするのは禁じられています。
多いときは、60リットルのごみ袋が、満杯になります。
官公庁のボーナスが出た10日はたくさん捨てました。
『景気の悪さとか考えてつくればいいのに』
と思いました。
 もちろんお客様に、食品を安心して買っていただくには、賞味期限の切れた食品を処分することが大切だと思います。
賞味期限を偽装すれば大きな社会問題になる時代ですから。
処分は当然のことでしょう。
 でも、どんどん感覚がまひし、飢えで死んでいく世界の人たちのことも考えずに平然とケーキを捨ててしまう人にはなりたくありません。
 この罪悪感に耐えられなくなったとき、私はアルバイトをやめるしかないのでしょうか。」
                     (朝日12月13日)


こういう感受性の高い、心優しい高校生がいるということ、その人が、自分の心をこうして明かしてくれたこと、
とてもうれしいことでした。
食べられるもの、使えるものが、無駄に捨てられ、ごみになり、
一方で飢えて死んでいく人がいる。
それに対する葛藤。これでいいのか。
この心根が美しい。


東京でしたか、
仕事のない働けない人々のための宿泊所の食堂経営者が、
期限切れ前の弁当や食材をスーパーやコンビニから提供してもらい、
とても安くて、おいしい食事を作り、入居者に食べてもらっているというニュースがありました。
売れ残りを、養豚などの餌に使ったり、堆肥にしたりして、活用しているところもあります。


この投書は、いい教材です。
【よのなか科】の授業で使えます。
あなたならどうする?
資源の問題からも、労働の問題からも、
食糧問題からも、
現代文明の観点からも、人間の心の問題からも、
使える教材です。
「この罪悪感に耐えられなくなったとき、私はアルバイトをやめるしかないのでしょうか。」
投稿者、遠藤麻美さんが問いかけています。


ぼくが中学校の現役教師のころは、教材に使えそうな記事を見つけると、学級通信に掲載して、生徒たちに読んでもらいました。
そして感想意見を生活ノートに書いてきてもらいました。
ぼくはその中から、発展的に考える材料になる感想意見を次の学級通信に掲載しました。
そうすると紙上討論のような感想意見集になります。
テーマによっては、さらにそれを読んで意見感想を書いてもらいます。
こうして生徒たちの紙上討論を組織していきました。
教材は、新聞紙上でもたくさん見つけることが出来ます。