マーばあちゃん、回復

michimasa19372008-11-24






ひとり暮らしのお向かいのマーばあちゃんが、やっと元気になった。
食べられるようになったし、まだ足もとはおぼつかないが歩けるようになった。
結局入院を拒んで、自宅で自力で治した。
自力と言っても、力を振り絞ってモミジマークをつけた車を運転し、かかりつけの医院に行って点滴などの治療やってもらったからだった。
食べれないし、歩くのもやっとの状態でも自分で医者に行くというから、
「頑固だからねえ、言っても聞かないからねえ」と、お世話しているミーおばさんがあきれる。
救急車は呼びたくない、入院はしない、往診をしてくれる村の医者は以前断られたことがあったからその先生には診てもらいたくないと敬遠、
ずっと家の中で寝ていた。
電気がついているとき、ついていないとき、それを観察しながら、状態を判断する毎日だった。
何も食べてないのではないかなあと、一度鮭のムニエルの温かいのを夕食に持っていったら、まだ口の中が痛くて食べられないと言う。
「明日、電子レンジでチンして食べたらいいよ。」
そう言ったものの、無理かもしれないと思えるほどの弱り方だったが、せっかく持ってきてくれたものだでと、恐縮して受け取ってくれた。
そんなこんなで、近所の人たちから見もまれながら自分で治すと言ってやりとおした。


回復してから、庭の垣根の間をくぐりぬけて、マーばあちゃんがやってきた。
庭の丸木のベンチに腰掛けたマーばあちゃん、
「やっと治っただ。」
「原因はなんだったの?」
「ひどい目にあっただ。健康食品だとか栄養食品だとか言って、知ってる人がすすめるから、
高い金払って買って毎日飲んだだ。いろんな種類があってね、こんなにあっただよ。」
手のひらを開いて、ここにいっぱいだと言う。
「お通じはなくなるし、お腹は張るし、顔がはれるわ、熱は出るわ、
とうとう口の中全部痛くなって、何も食べられなくなってねえ。」
「それを医者に言いましたか?」
「言わなかっただ。」
知人が薦めてくれたものだったから黙っていた。
「そりゃあ、言わなければ医者も治療のしようがないですよ。」
「そんなの言えば、もう診ない、帰れと言われるだよ。」
「そんなことないよ。他にも被害者が出ているかもしれないよ。」
「それを薦めた人には連絡しただ。そしたら、あんただけだよ、そんなこと言うのは。他の人はだれもそんなことはない、と言うでね。」
「でも、それは黙っていてはだめですよ。」
「販売元へは電話しただよ。そしたら、そこの人は、合う人、合わない人もいるから、
もう飲まないでくれと言っただ。」


久しぶりに洋子が餃子を家でつくってくれた。
「餃子は、マーばあちゃん好物だと言ってたよ。」
「じゃあ、持って行く?}
焼きたての熱々を、持っていった。
家の電気は消えていたが、奥からマーばあちゃんが電気をつけて出てきた。
「歯を抜いたでね。」
口にマスクをしている。
「餃子、もってきたよ。」
マーばあちゃんの顔がほころんだ。
「熱いからね。」
「ありがとね、ありがとね。」
うれしそうだ。
家に帰って、
「よろこんでいたよ。」
洋子に言うと、よかった、よかった、と洋子も喜んでくれた。
おいしく食べれば、もっともっと元気になるよ。